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ひとつふたつ 春の病葉 散る花に 列なし歩む 我蒼ざめて
<読み>
ひとつふたつ はるのわくらば ちるはなに れつなしあゆむ われあおざめて
<意味>
一枚二枚と、散る桜の中に春の病葉が混じっている。列をなして歩んでいるわたしの顔も蒼ざめている。
<解説>
「病葉 [わくらばと読む]」は、文字通り、病気にかかって変色してしまった葉の事。季語としては、本来ならば夏である。その季節外れのものが、散り逝く桜に混じっている。
その一方で、病気だろうか、それとも、生活の疲れだろうか、列に並んで歩いている作者の顔が蒼ざめている。
言外に「病葉」と己自身を同等に感じていると、解釈出来る。所謂、疎外感 (Entfremdung) を詠んだ歌であろう。
春なのに。
「わくらば」という音は、「邂逅」という文字の音にも通じる事を指摘しておく。列のその先になにかあるのかもしれない。