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え寝もせず 肚に降り居る 小鬼かや 生々しきを 唇に遺せし
<読み>
えねもせず はらにおりたる こおにかや なまなましきを くちにのこせし
<意味>
寝ることも出来ないのは、お腹の上に降り居る小鬼のせいだろうか。生々しい感触を、唇に遺しっていった。
<解説>
金縛り (Sleep Paralysis) には、科学的な説明がつけられたり、非科学的な説明がつけられたり、している訳だけれども、いずれにしても、その瞬間の恐怖と、それが解けた後の後味の悪さを解消してくれるものでもない。しかも、蒸し暑い夏の夜に起こるそれは、それがより強調される様だ。
この歌に詠み込まれている情景は、ヨハン・ハインリヒ・フュースリー (Johann Heinrich Füssli aka Henry Fuseli) の『夢魔 (The Nightmare)』の様だが、下の句は、必ずしもそれだけではないものを予感させている。
初句の「え寝もせず」は、副詞「え」 + 打消しの助動詞「ず」終止形の呼応で、不可能を表す。「〜できない」。