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奔る人に 駆けぬけられて 辿る家路 嗚咽ぞ不意に 立ちすくまらるる
<読み>
はしるひとに かけぬけられて たどるいえじ おえつぞふいに たちすくらまるる
<意味>
ランニングをしている人に駆け抜けられながら辿る家路で、不意に嗚咽に襲われて立ちすくまらずにはいられなかった。
<解説>
六・七・六・七・八と、破調を呈しているのを観るだけで、作者の心持ちの整理されてなさが読み取れる。それだけに襲われた嗚咽が激しいのだろう。
なにがそんなにも強いこころの動きとなって顕われたのかは、推測の域に停めるしかないのだが、早朝ランニングに勤しむヒトの確かな脚の運びと、己のそれとを観比べて、その違いに驚いたのか。それとも、早朝に家路に向かわねばならない己の境遇に哀しみを見出したのか。
結句の「らるる」は自発を顕わす助動詞の連体形。第四句の係助詞「〜ぞ」に呼応した係り結びとなっている。
「〜せざるを得なかった」とか「自然に〜してしまった」と訳せばよい。