ロバート・ワイズ・監督のふたつの代表作にして、かつミュージカル作品である『ウエスト・サイド物語』と『サウンド・オブ・ミュージック』は、そのいずれもが序曲を奏でながら上空からの俯瞰撮影で幕を開ける。
残念ながら、いずれの作品も映画館での上映体験はしていないので、スクリーンに映った際のスケール感や映像美は想像するしかない(あ、でもその昔、大学の大教室で観た『ウエスト・サイド物語』のは、結構大きかったかも?)。
各々のミュージカル楽曲のいわゆる美味しいところ取りをした序曲を聴きながら、延々と移し出されるタイトルバックは、ある意味で冗長だし、時代がかっていて鼻白む事は否定出来ない。けれども、それは家庭用ホームシアターで映画を観ようという、後の世の我々だから言える事であって、リアルタイムでこの2作品を体験したら、どの様な感慨を持つのだろうか?
と、いうところから筆を起こしていきたい。
cf.俯瞰撮影に関しては、こちらで、適切かつ簡単な説明がありました。参照願います。
先ず最初に思い起こさなければならない事は、いずれの作品もブロードウェイでの大ヒット作であって、その人気や評価を受けての映画化であるという事。監督として行わなければならないのは、ステージ上の成功をそっくりそのまま、もしくはそれ以上の完成度でもってスクリーン上に翻案しなければならないということだ。
その一つの手法として、リアリズムに徹するという事が挙げられる。ホンモノのN.Y.のウエストサイドやホンモノのオーストリアのアルプスの風景を映し出す事。つまり舞台装置として完璧にホンモノを用意して、ホンモノだけが醸し出す事が出来る質感や空気感や匂いを、映画全体のトータル・イメージとして演出する、その為に、まずは、あの冗長とも言える俯瞰ショットが必要だというのは、簡単に解るだろう。