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煌めくや 闇に一条 蜘蛛の糸 手繰る咎人 え掬はられざる
<読み>
きらめくや やみにいちじょう くものいと たぐるとがびと えすくわられざる
<意味>
闇の中に一条の蜘蛛の糸が煌めいている。罪人はそれを手繰るが、その蜘蛛の糸によって、救われる事も掬われる事もない。
<解説>
歌そのものは、芥川龍之介 (Ryunosuke Akutagawa) の小説『蜘蛛の糸 (Kumo no Ito : The Spider's Thread)』によったモノで、その主人公である健陀多 [カンダタ] (Kandata) の顛末を描写したのに過ぎない。
しかし、詞書を観れば、健陀多 [カンダタ] (Kandata) の状況が、この時季の、心象風景として作者に映じているのだろう、と解釈出来る。
僅かな可能性を賭けて差し伸ばされた救済、即ち「蜘蛛の糸」を私利私欲によって、断ち切られた健陀多 [カンダタ] (Kandata)、それをこの冬のナニかに準えているのである。
結句「え掬はられざる」は、陳述 [呼応]の副詞「え」 + 打消しの助動詞「ざり」連体形「ざる」で、不可能を顕わし、「〜出来ない」と訳す。それに挟まれた助動詞「られ」は可能の助動詞「らる」未然形である。
なお、「掬う」をここでは、「救う」との掛詞と解釈してみた。あまり意味はないかもしれないが、ふと、セーフティ・ネット (Safety Net) という語句を連想してみたからだ。