無事に新設の普通高校に入学出来たからって、それでメデタシメデタシって訳ではない。物語はそこで終わったり、そこから始まったりする。でも実生活は、その前もそこから先も続く。途中で降りなければね。「新しい生活」も三ヶ月もたてば、みんな、「今」に巻き込まれてしまう。中学のバンド仲間達に会うこともないだろう。この間、ドラムのAクンのガレージに行ったら、もう来ないでくれと言われた。日中のアルバイトが終わったら夜間の工業へ行く彼には、時間がないんだとさ。馴染みのレコード店で偶然会ったMクンに連れられて、彼の新しいバンド仲間のリハ観に行ったら、やつら酒も煙草もやってたから、びびっちまった。所詮オレらは、ボンボンですよ。でも、やつらS学園だから、坊主頭。だせぇのなんの。それにさぁ、ジョー・ストラマーだって中産階級なんだぜ?
高校に友達なんかいないよ。やつら、ピストルズとかストラングラーズとかさえ、全然知らないし。楽器上手いやつはいる。でも、フュージョンだし。テクニックはあっても語るべきものがない。あとは、そうだな。ボストンとかイーグルスとか終わっちゃっているやつ。あぁ、いるいる、ウチにもいるよ。リッチーのソロだけ弾けるやつね。やっぱ、ヒューみたいに、かっちとしたエイト・ビート刻めてなんぼでしょ、ギターは。
そういえば、おとといか。Eに会ったよ。チビで眼鏡のね、あいつ。いきなりオレにカネせびりだすから笑っちゃった。本人カツアゲのつもりらしよ。オレらにさんざんイヂメられたこと憶えていないのかね。めんどくせーから逃げたけど。