佐々木マキの新作、絵本『また ぶたのたね』(絵本館)にはタイトル・ロール?の豚の生る木が登場するが、澁澤龍彦に薫陶を受けた人間ならば、否が応でも思い出さざるを得ないのが、「スキタイの羊」や「マンドラゴラ」や「ワクワクの木」だろう。つまりは、植物から誕生する動物、もしくは動物を果実とする植物の事である。
羊が生る植物、「スキタイの羊」もしくは「バロメッツ(タカワラビ)」と呼ばれる植物に関しては、澁澤自らが『羊の物語<画像:>』(河出文庫『幻想博物誌<画像:>』)で詳細に語っている。私もこの文章が収められている同文庫で、新卒で就職した会社を離れたばかり、二回目の浪人時代に読んだ。澁澤龍彦の文章は、もてあますばかりの時間を蕩尽するのには丁度良くて、例え文庫本と言えども、通勤電車内の様な慌ただしさの中で、味わうべき類いのものではない。