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待ち佗びて 時計ふたつは 夜もふけて 心の臓より おおきなるかな
<読み>
まちわびて とけいふたつは よもふけて しんのぞうより おおきなるかな
<意味>
待ち侘びていると、時計ふたつが刻む音は、わたしの鼓動よりもおおきいことだなぁ。
<解説>
第2句「時計ふたつ」は、例えば同じ室内にある柱時計と目覚まし時計とでも思っていればいいのだろうか。それとも、実際にある時計と、自身の心象の中にある時計、このふたつと考えればいいのだろうか。
仮に前者ならば、ふたつの時計の音が共振して聴こえている際の、作者の心象を考えて理解する事になるが、仮に後者ならば、客観と主観、ふたつの時の経過の齟齬を考えさせられる事になる。
下句「心の臓より おおきなるかな」は、通常考えられるのは寧ろ逆の事だ。不安ならば、時計の刻む音よりも鼓動の方が大きく響く筈だ。だけれども、それを敢えて逆にしてみれば、その音の存在感を逆に駆り立てる。耳の中で、「不安」をひたすら駆り立てている様に思えるのだ。
しかも、この時季、所謂、秋の夜長、ながいながい時間に、そんな心象のまま放置させられているのである。