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風の云ふ あくがれしひとも 逝きたると あめの季節の そのまへにあめ
<読み>
かぜのいう あくがれしひとも ゆきたると あめのきせつの そのまえにあめ
<意味>
風の便りに、憧れていたあのヒトも亡くなったと謂う。雨の季節のその前に雨が降る。
<解説>
上京して暮らしていても、折々に触れて、出身地から情報が寄せられる時がある。その殆どは、かつての友人等の近況で、その情報をぼくに伝えるヒトは、具体的に謂えば母親なのだが、その近況をもって、ぼくとその友人との差、つまりは社会的な地位等を比較して暗に難じようとするのだ。かつてのその近況は、結婚や出産に関するモノばかりだったが、最近はそれらに変わって、訃報ばかりなのである。
歌の主題は恐らくその様なモノなのだろう。初句「風の云ふ」を"風の便り (Rumor)" と解したのはそんな訳なのである。
恐らく、それは不確かな情報でしかも、幾日もしくは幾週間も前、さもなければ幾ヶ月も前のモノだ。だからこそ弔意を故人もしくは遺族にあらわす事も出来ずに、哀しみに甘んじる事しか出来ないのだ。