<画像:20191205.jpg>
傘もあり そらを睨むも 反故となる 立ちをるままは ふるあめがゆへ
<読み>
かさもあり そらをにらむも ほごとなる たちおるままは ふるあめがゆえ
<意味>
手許に傘もあって、空を睨んでみても約束は反古となった。そこに立ち尽くしているのは、降っている雨のせいである。
<解説>
ここ数週間、週明けは雨が降っている様な気がする。秋の終わり、もしくは、冬のはじまりのこの時季、すこし珍しいのではないか。そして、例年よりも寒い。
この月曜日はそれが甚だしかった。毎週のこの日は、通勤時間帯に、ヒトビトの流れとは逆の方向へと、ぼくは向かう。そして、その結果、ラッシュにまみれる彼等の行動や表情をまざまざとみせつけられる。
激しい雨のなか、傘ももたずにかけぬけていく少女がひとりいる。大丈夫なのだろうか、ぼくが身支度を整えているときから、雨はふりしきっていた。制服姿だから、前夜からのとまりがけで遊び呆けていた訳でもあるまい。
その謎 [と綴ると大袈裟なのだが] は、目的地最寄りの駅にぼくが到着した際に、ほんの少し解ける。小雨なのだ。そして、その日は、終日、何度となく、あちらこちらへ向かったのだが、駅構内を出る度に、降る雨の様相が全く異なる。時に激しく、時にやんでいる。それがほんの数10分の間、一駅二駅の距離のあいだに起こるのである。
だからきっと、先程の彼女の自宅近辺は、雨が降っていなかったのだろう。
この歌もきっとそんな降雪に由来しているのだ。
外出先、もしくは目的地に着く直前に、ドタキャンの知らせをうける。作者にはそれが納得できない。おそらく、キャンセルした側とされた側の、みている光景が全く違うのだ。
結句では総ては天候のせいであるとしているが、作者本人の内心はきっと真逆だろう。