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有楽町 よみうりホールで行われた、スパイク・リー(Spike Lee)監督作品『インサイド・マン(Inside Man)』の試写会に行った。
ニューヨークのド真ん中、マンハッタン信託銀行に起こった人質立てこもり事件。完全犯罪を目論む犯人グループのリーダー[演:クライブ・オーウェン(Clive Owen)]と失策で干されていた黒人刑事[演:デンゼル・ワシントン(Denzel Washington)]との間に虚々実々の駆け引きが行われている真っ最中に、敏腕女性弁護士[演:ジョディ・フォスター(Jodie Foster)]が、事件に介入してきてから、あらぬ方向に物語が展開する。
三つ巴の心理戦?
否、それだけではない。刑事は作戦のイニシィアティヴを握る為にSWATの隊長[演:ウィレム・デフォー(Willem Dafoe)]との主導権争いをしなければならないし、弁護士も依頼者である銀行のオーナー[演:クリストファー・プラマー(Christopher Plummer)]とのビジネス上の駆け引きを凌がなければならない。
そして、本来ならば被害者である50人の人質各々もまた、疑心暗鬼の刑事達の取り調べで、 己が身の潔白を証明しなければならない。何故ならば、犯人達は50人全員に、彼らと同じ服装、同じサングラス、同じマスクを身に纏う事を強要したからだ。その結果、誰も、犯人と人質の区別がつかない....。
だから、この映画、主役扱いの三人の物語と観るよりも、集団劇/群像劇として観るのが正しい観方かもしれない。尤も、と思ったのは、ほんの数シーンでしか焦点の当たらない出演者も主役級の三人と対等に、きちんと紹介しているエンディング・クレジットを観てからなのだけれども。
ところで、この映画、9.11.(September Eleven)以降のNYを舞台に選んでいるリアリティがきちんと描かれている。多人種、多民族の街、しかもテロへの恐怖とその裏返しとしての差別。そしてそれがあまりに日常化しているからこそ、シリアスな描写ばかりでなく毒を含んだ笑いにも転化している。
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