2005年04月28日
return of the big minor:吾妻ひでお『失踪日記』
一週間振りに近所の本屋に行く。
日々の生活のフローチャート(起きて風呂入ってニュース観てそれから?)的には、午過ぎがいいに決まっているんだけれども、その時間帯は昼休みどきでもあるのだから当然、近隣のサラリーマンやOL諸氏で混んでるんだよね。人が退け始めたあたりを見込んでゆったりと出かける。
いつものコースどりでいつもの様に流れていくと、先週の平積みが今週は山積みになっているのに驚く。
なので、今週はちゃんと書きますね。
ものづくし(click in the world!) 6.:
あじまひでお
ここまで引っ張って来て、もったいつけるのはナニではあるが。
山積みになっているその本とは、普段はコミックスなんか歯牙にもかけない雑誌が最近やけにチカラのはいった紹介記事や書評を掲載している、吾妻ひでおの『失踪日記』のことである。
くだんの書店でも、なんかの雑誌の書評の切り抜きをお手製のポップで貼り出してある。このコーナー担当者が単なる、美少女おたくかSF おたくかマンガおたくのいずれかであれば、至極当然の当たり前の話なんだけれども、ここはあの大嫌いな『まんがの森』でも今は亡き『青山ブックセンター』(えぇ!?まだあるの?)でもないから不思議。普通の駅前の、どこにでもある本屋さんです。
それに、あっちこっちの雑誌でみかける書評をすべて、かのいしかわ”りとるめじゃー”じゅんが書きなぐっている訳ではなかろうて。
勿論、今作は、作者の実体験に基づく、ホームレス日記やガテン生活日記や、アルコール依存症による闘病記という体裁をとっているから、そういう意味では、一般週刊誌レベルでは取り上げ易い作品なのかも知れない。
カルト・マンガ作家という意味では、吾妻よりもカルト度が高い花輪和一の、『刑務所の中』の様に映画化される可能性は....................あるのか?
ホームレスやアルコール依存といった、リアリズムでシリアスなテーマよりも、実はもっと大事なことがある。
さっき”美少女おたくかSF おたくかマンガおたく”って書いたでしょ?
声高に叫ぶつもりは全然無いけれども、やっぱり、彼は、現在の”萌えの文化”を形造ったイノベイターであることは、間違いないのだ。
彼の作品にこんな描写がある。
”書店で大好きなSFの単行本や文庫をそれこそ山の様に抱えて、楽し気にレジへと向かうあじまひでお。レジでは、これらの本は「専門の」レジコーナーがある事を示唆される。あじまは地底深くあるうす暗い洞窟の様なレジに案内される。あじまはそこでSF まにあの証明として、文字どおり「SF」というまっ赤に灼けた焼印を押されそうになる”
かつてはネガティブな存在であった「まにあ」は、今や、ポジティブな存在として主張しているばかりでなく、経済的なマーケットとしても無視出来ない存在ともなっているのは、周知であろう。
かつては自らの心の奥底に押された「まにあ」の烙印をひた隠しにひた隠し、数少ない同行の士(つまり「まにあ」ですね)のみに開いたそれを、現在ならば、その熱い焼きごてで自らを焼き、その焦げ痕を誇らし気にさし示しているのだ。
”萌え”っていうタームは、それをシンボリックに表現しているのではないのかしら?
個人的には『不条理日記』[過去様々な形で再販されています]を死ぬ程読んで(この作品って元ネタを知れば知る程、見え方が変わってくるんだよ
ね。でもさぁ、新井素子が当時の日本SF界のあいどるって時代をかんじるなぁ)、一回目の失踪から復帰して、『SFマガジン』に連載(すぺーすおぺらの秀逸なパロディ『ぶつぶつ航海記』[アズマ二ア?]に収録)を開始した頃は単純に嬉しかったから、新作が読める事は単純に良しとせねばなるまい。
今頃になって解かったんだけれども、彼のデヴュー作とされる『二日酔ダンディー』もリアルタイムで読んでたりするんだよね。
posted =oyo= : 01:22 | comment (0) | trackBack (0) | たいの日記 /ものづくし (click in the world!)
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