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2005年06月22日

宇宙戦争(原題: THE WAR OF THE WORLDS)

トム・クルーズ主演スピルバーグ監督作品の『宇宙戦争』のCMスポットを観ていると、ほんの一瞬だけ画面に登場するウォ−マシーン(?)を発見して、あぁ、今回の侵略者はどんな姿をしているのだろう、とやきもきする己を発見する。
勿論、原作ハヤカワSF文庫版にリンク貼ろう)はSFの始祖、H.G.ウェルズの古典的名作であって、その初の映画化作品、1953年のジョージ・パルの『宇宙戦争』も名作の誉れ高い傑作。そして、もうひとつ忘れてはならないのがオーソン・ウェルズラジオ・ドラマとその作品が巻き起こした事件なんだよって事を、誇らし気に書こうとしたら、しっかり雑誌『映画秘宝』の最新号で三作品ともきちんと紹介されている。あぁ、残念。
だから、興味のある向きはそちらを参照して下さい。同誌では、外宇宙からの地球侵略というテーマが同じお馬鹿映画『インデペンデンス・デイ』もおまけで特集しているので、志半ばにしてその野望を果たせなかった、無数の侵略者達を悼みながら地球の平和と宇宙の平和に想いを馳せるには、良いかもね?

なので、ちょっと個人的な体験を書く。
原作から誕生した、あの蛸の八ちゃんの様な火星人のイメージ(宇宙人と言えば火星人火星人と言えば蛸の八ちゃん蛸の八ちゃんと言えば田川水泡って戦前のギャグマンガ家っすよ『のらくろ』の)を、いつどこで最初に観たのかは覚えていないのだけれども、少なくとも小学生の頃に観たマンガ家入門みたいな本では、今どきこんな宇宙人はギャグマンガでさえ登場しない、宇宙人としてのリアリティを追求しなさいってな言及をされていたから、当時でさえホントに使い古されて擦り切れたイメージなんだろう(って”宇宙人としてのリアリティ”って一体?)。そ−言えば、あれから30年以上たっている訳だけれども、今やE.T.ロズウェル系の宇宙人もかなり手垢にまみれているよねぇ。
その一方で、パルの侵略者は、第一次怪獣ブームの時。朝日ソノラマの『怪獣大図鑑』か秋田書店の『怪獣図鑑』か少年マガジンのグラビア(当時は大図解と呼ばれた)で初めて観た(勿論、これらの監修は大伴昌司)。なんで憶えているかってぇと、その後TVで観たパル版『宇宙戦争』の時に記憶がフラッシュバックしたのが真相です。ほんの一瞬しか出ない癖にその残るイメージはあまりに鮮烈だからね。
そして、どうしても忘れる事の出来ないのが、オーソン・ウェルズのラジオドラマ『宇宙戦争』って繋げられるとカッコいいんだけれども、大概、世の中はそうはならない訳で。尤もH.G.ウェルズ原作(こちらは創元SF文庫版にしておこうっと)はちゃんと読んだのよ。その作品と作品が全米に巻き起こした事件をTV映画化した作品『アメリカが震撼した夜』をその昔、NHKで観たんですね。
そのTV映画では、生放送のラジオ番組をオーソン・ウェルズが演出するシークエンスを丹念に追う一方で、その放送が巻き起こして行く事件(あまりにリアリズムに徹した演出が聴取者にあたかも現実に宇宙人が侵略したかという錯覚を与えパニックになる)を描いて行く。個人的には、楽器や身の回りの品々で生み出される様々な擬音を操り、非現実な事件をリアルに描写していくオーソン・ウェルズのカッコよさ。まるで”ヤマタケの指[(C)伊集加代:『ヤマタケ★デラックス』P70もしくは『大岡越前 抒情編』ライナーノーツ参照]みたい。って、彼のレコーディング観た事ないんだけれども(苦笑)。

ものづくし(click in the world!) 10.:アメリカが震撼した夜

でね、ホントはここからやっと本題なんだけれども。
一度、演ってみたいんだよねオーソン・ウェルズ版『宇宙戦争』。っていうか、徹底的なリアリズムに即したフィクションって。
そう思わせた事の発端は、平成ゴジラ・シリーズを映画館で観ている時。確かに大きなスクリーンで伊福部マーチが鳴り響く中、モスラキングギドラメカゴジラといった昭和のライバル達との戦いは、余計な事考えなければエンターテインメントに徹していて清々しい事この上ないんだけれども。
やっぱり余計な事を考えてしまう(大笑)。
あんなでっかい怪獣が日本を席巻するのならば、そこから生まれる災厄や恐怖はもっと違ったものになるんぢゃあないのだろうか? 例えば、24時間TV局をまるまる拘束して、怪獣が日本近海で発見されてそれが上陸して行く、その過程を丹念に描いたらおもしろいんぢゃあないのかなぁ?って思ったんですよ。「事件」や「災害」、もしかしたら「戦争」と、その報道のシミュレーションとしたら、結構面白い作品になるんぢゃあないかなぁって。(と、いうかシリーズに登場するマスメディアやジャーナリストの扱いが、すごくゾンザイなんです。第一作の鉄塔のシーンから一歩も進歩していないんぢゃあないかって。)
だから、ハリウッド版ゴジラは、公開前はすっごく期待したのだけれども(以下略)。

結局、その後、シミュレーションやその想像力よりも強力な、「事件」や「災害」や「新しい戦争=テロリズム」が現実に起きてしまう。TVの画面を凝視める我々はその非現実性に驚かされて、現実の出来事にも関わらず、まるでフィクショナルな映像作品の様に魅入ってしまうのです。

ここでちょっと余談に走るけれども、そもそも原作そのものが当時の帝国主義や植民地主義への批判として書かれているのは有名な話ではあるのだけれども、その裏メッセージは後に続くリメイク作品にも連綿と受け継がれている。あのラジオ・ドラマが全米をパニックに陥れたのは、オーソン・ウェルズの巧妙な演出もさる事ながら、ナチズムの擡頭に対する合衆国の恐怖が存在してこその事件だし、パルに関しては米ソ冷戦構造が全世界を支配していた時代だからこそのリアリズムだと思える。
それを踏まえて考えると、今回の映画化作品の影に潜むものはなんだろうか?
これまで、『未知との遭遇』や『E.T.』で友好的な宇宙人を登場させたスピルバーグが、あえて侵略者としての宇宙人を描く。それはキャッチコピーでうたわれている"愛と勇気"だけがのモチベーションとは限らない、その証左である様に思えて仕方がないのだが?

不謹慎のそしりを免れないかもしれないけれども、9.11.倒壊していくツインタワーの映像は、いつ観ても「美しい」です。

それでも、いや、だからこそ、現実よりももっと自由な想像力と創造力を飛翔させたアイデアを、徹底的なリアリズム描写で観てみたいなと、思っています。誰か資金協力してくれないかな?(ここまで読んで来て一体、この駄文は誰のリクエストだろうって思った方へ、つまりは僕が皆さんに出資のリクエストをしていますって事?)

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