2005年09月26日
『ブラック・アンド・ホワイト』by ストラングラーズ(BLACK AND WHITE by THE STRANGLERS) white side
1978年、本作品が発表される。
セックス・ピストルズ(THE SEX PISTOLS)やクラッシュ(THE CLASH)やダムド(THE DAMNED)がデヴュ−した'76年をパンクロック元年とすると、既に三年が経過していた。
1978年、この年の1月には全米ツアー中のセックス・ピストルズ(THE SEX PISTOLS)は、ヴォ−カルのジョニ−・ロットン(JOHNNY ROTTEN)の脱退表明で実質的に解散、2月にダムド(THE DAMNED)は最初の解散発表(その後、何度も再結成→解散を繰り返す)、クラッシュ(THE CLASH)はマネージメントのごたごたと映画『ルード・ボーイ』の撮影の最中に2nd.アルバム『動乱(獣を野に放て)(GIVE'EM ENOUGH ROPE)』を発表する。そして彼らパンクムーヴメントの張本人達の影響を受けた次の世代のバンドやアーティストの相次ぐ登場と同時に、新しい音楽が登場しつつあった。
そんな1978年5月に発表されたのが、ストラングラーズ(THE STRANGLERS)の3rd. アルバムである本作『ブラック・アンド・ホワイト(BLACK AND WHITE)』である。
アナログ盤でのside AをWHITE SIDE、同じくside BをBLACK SIDEと命名し、前者ではこれまでの彼らのスタイルを踏襲するポップでアグレッシブでストロングな楽曲を提供、後者ではこれまで外部に向けていた彼らの視線を自己の内面に向けたダークでシリアスなナンバーが並ぶ。
オープニング・ナンバー「タンク(TANK)」に乗り込んで戦車を疾駆する主人公(=我々)は、アルバム最終曲「イナフ・タイム(ENOUGH TIME)」で、「まだ時間はあるのか?(HAVE YOU GOT ENOUGH TIME?)」と喉元に言葉の匕首を突き立てられる。そんな作品だ。
イギリス国内の政治状況とその鏡面状態の様な東欧諸国、初めて訪れた日本という国、前年にデヴュ−してからの約一年、彼らが体験し肌で感じ取った様々な「イエス」や「ノー」、様々な「!」や「?」を、一枚の作品に凝縮したものが、このアルバムなのだ。
大仰な表現をすれば、シングルマーケット中心だったパンクロックが、アルバムというメディアを意識した構成をとった初の「コンセプトアルバム」でもあったのだ。
当時のツアーでは、ライブは二部構成をとっており、前半は過去のヒットチューンで選曲されて、後半は本作品だけからセレクトされたものとの事。さらに後半ではライティングは白色光のみを使用し、「しろとくろ」の世界を演出したと言う(当時の模様はライヴ・アルバム『ライヴ「Xサーツ」(LIVE X-CERTS)』で伺い知る事が出来る)。
世界を「しろとくろ」の二色に塗りわける、もしくはお前は敵か味方かと問いただす。そんな単純明解な手法は、時に稚戯とも採られたが、彼らのポリティカルな視線は後のハードコア・パンクの登場を促し、内面を抉り出す表現手法は、ポスト・パンク的アプローチの源流となる。
本作品発表後、彼らは汎ヨーロッパ主義的な方法論へと徐々に移行していくが、それはまたその後の話。
'80年も'84年も'99年もそして21世紀もやってきていない1978年では、まだこれで充分。ここから始まったと言っても過言ではない。
black sideに続く。
ものづくし(click in the world!) 14.-white side:
ブラック・アンド・ホワイト BLACK AND WHITE
by ストラングラーズ THE STRANGLERS
ホワイト・サイド WHITE SIDE
01.タンク TANK
(歌詞/ギターコード譜)
02.ナイスン・スリージー NICE 'N' SLEAZY
(歌詞/ギターコード譜)
03.アウトサイド・トーキョー OUTSIDE TOKYO
(歌詞/ギターコード譜)
04.スェーデン(東部戦線異状なし) SWEDEN(ALL QUIET ON THE EASTERN FRONT)
(歌詞/ギターコード譜)
05.ヘイ!(ロボットの勃興) HEY!(RISE OF THE ROBOTS)
(歌詞/ギターコード譜)
06.トイラー・オン・ザ・シー TOILER ON THE SEA
(歌詞/ギターコード譜)
ブラック・サイド BLACK SIDE
07.夜を告げる鐘 CURFEW
(歌詞/ギターコード譜)
08.暗黒の恐れ THREATENED
(歌詞/ギターコード譜)
09.ドゥ・ユー・ウォナ? DO YOU WANNA?
(歌詞/ギターコード譜)
10.死と夜と血(三島由紀夫に捧ぐ) DEATH AND NIGHT AND BLOOD(YUKIO)
(歌詞/ギターコード譜)
11.イン・ザ・シャドウズ IN THE SHADOWS
(歌詞/ギターコード譜)
12.イナフ・タイム ENOUGH TIME
(歌詞)
ヒュー・コーンウェル/Hugh Cornwell:guitars and vocals
ジャン・ジャック・バーネル/Jean Jacques Burnel:bass and vocals
デイヴ・グリーンフィールド/Dave Greenfield:keyboards and vocals
ジェット・ブラック/Jet Black:drums and percussion
ローラ・ロジック/Laura Logic plays saxphone on"Hey!"
Produced by Martin Rushent
February/March 1978
Engineer:Alan Winstanley
All composed by 'The Stranglers '
All published by Albion Musicc/April Music
P.1978 United Artists Records Ltd
Sleeve Design:Kevin Sparrow
Cover Photography:Ruan O'Lochlainn
The Stranglers are Albion Artists
Stranglers Information Service
各収録楽曲の配信はこちらです。
僕の持っている日本盤LPの解説は、大伴良則氏、大貫憲章氏、渋谷陽一氏、水上はるこ氏が執筆されています。
また歌詞の対訳は中川五郎氏が担当されています。
posted =oyo= : 23:55 | comment (0) | trackBack (1) | adventures of t.g.chaung /ものづくし (click in the world!)
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