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2005年11月02日

『続夕陽のガンマン・地獄の決斗』をNHK-BS2で観る

監督セルジオ・レオーネ、音楽エンニオ・モリコーネ、主演クリント・イーストウッド、このゴールデントリオの三部作の最終作がこの『続・夕陽のガンマン 地獄の決斗』。
黒澤明監督作品『用心棒』を換骨奪胎した『荒野の用心棒』、ある意味イーストウッドを喰ってしまったリ−・ヴァン・クリーフの黒ずくめの賞金稼ぎの渋さがたまらない『夕陽のガンマン』、そして本作『続・夕陽のガンマン 地獄の決斗』。
(ちなみに『続・荒野の用心棒』は全然別の作品。リアルタイムで観ている筈なんだけれども当時としちゃん4才、主人公が棺桶ずるずる引き摺ってた事しか憶えていません)

観るヒトによって、どれを最高作と推すかはヒト各々だろうけれども、僕個人としてはこの作品『続・夕陽のガンマン 地獄の決斗』がいちばん。

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さて本作、原題は『THE GOOD,THE BAD AND THE UGLY(いいヒト、わるいヒト、ガメツいヤツ)』とある様に、いいヒトのイーストウッドとわるいヒトのヴァン・クリーフとガメツいヤツ(昔観た吹替版はなんて訳してあったかな?)のイーライ・ウォラック、この三人が演じる無法者達が、隠匿された南軍の軍資金20万ドルを巡って、ある時は手を結び、ある時は反目し、ある時は出し抜きあい、そしてある時はその命をつけ狙う、三つ巴の争闘が繰り広げられるという作品。
だから、いいヒトとわるいヒトとガメツいヤツは相対的なもので、その争いの局面局面においてその立場が変化するというややこしい話。
そもそも、いいヒトのイーストウッドは前々作、前作のイメージを引き摺っての登場(ご丁寧にクライマックスでは、先の2作と同様のポンチョ・ファッションになってくださる)、つまり便宜上のヒーローという立場だから、物語途中で挿入されるその出自と彼の兄との確執を観れば、実はウォラックが実質上の主役かと見紛う程だ。
そして、物語をさらにややこしくしているのが、舞台装置としての南北戦争。この三人が行く先々で、南軍北軍の戦闘状況に巻き込まれ、その結果として物語が延命して行く。と、いうのも、すわ決闘か!ここで雌雄を決するかという時に限って、もうひとつの戦闘が開始され、砲弾が飛び交う事によって、儀式としての決闘は中断されるのだ。

だからこの映画、上映時間3時間と長い。
しかし、三人のキャラクターを、説明的な台詞を一切排除してその行動で描写していく叙述スタイル。そして、レオーネならではの圧巻とも言える映像美で、最後までみせきってしまう。

顔に刻まれた何本もの皺を如実に映し出す登場人物のアップの彼方に、敵対する相手が遥か彼方に立ちはだかる、という70mmという超横長なワイド画面の特性を活かした映像。それはレオーネの登場以来、ありとあらゆる映像作品に引用され多用され盗用されて、今となっては、予定調和的な使い古された映像の感もなきにしもあらずだが、西部に吹き続ける突風やじりじりと照りつける熱い太陽や馬のいななきや酒場の嬌声といったものがリアルに迫ってくるのは、やはりレオーネ。そういった描写をえんえんと積み重ねる事によって、登場人物達の追いつめられた心情や緊迫した空気を描いて行く(このレオーネの手法、最も日本で影響を受けたのがさいとうたかをを頂点とする劇画だと思うんですけれども)。

だからこそ、その一方で、物語の序破急のリズムは激しく、随所に挟まれる映像マジックは素晴しい。
数百人もいる部隊がその輸送手段である列車の到着を待っている描写から始まって、ウォラックがその一台の車両に乗り込むや否や、その武装した列車が発車、そしてカメラが走り去る列車をアップからロングへと引き始めると、さっきまでホームに鈴生りだった兵員が一人もいない。
一本の橋梁を挟んで対峙している南軍と北軍、その橋梁が爆破されるや否や猛烈な戦闘が開始されるが、爆煙が消え去ると河を挟んで対峙していたふたつの大部隊が消え去っている。守るべき橋/攻めるべき橋が消失したからだ(ところで、この橋のエピソード、そっくりそのまま『地獄の黙示録』に引用されていると思うのは僕だけかしら?)。
実際にはありえない時間経過を、大胆な編集で最低限のカット数で観るものに納得させてしまう、それは映画的なリアリズムと言っていいだろう。

そういった物語の緩急を挟んで、最後に20万ドルの隠し場所に辿り着いてからの展開は、何度観ても素晴しい。まっ先に辿り着いたウォラックが、真の隠し場所を探し求めてぐるぐるぐるぐる走り回るシーン。三人による三つ巴の決闘シーン(誰にとっても、敵は右と左にいる2対1の対決)そしてそして...。

ものづくし(click in the world!) 18.:

マカロニ

ところで、『THE GOOD,THE BAD AND THE UGLY』を言い換えると、『モリコーネレオーネイーストウッド』とも読めるんだけれども?
これをマカロニつながりで誤読すると、『そうじとしぞうきんどーちゃん』(from マカロニほうれん荘)ってなります。

追伸:ハービー・ハンコックHARBIE HANCOCK)が『フューチャー・ショック』を発表しHIP HOPカルチャーが注目を浴び始めた80年代初頭、その仕掛人ともいえるマテリアル(MATERIAL)[当時の主要メンバーはビル・ラズウェルBILL LASWELL)、マイケル・バインホーンMICHAEL BEINHORN)、フレッド・マハーFRED MAHER)、とエンジニアのマーティン・ビシ(MARTIN BISHI)]が本作品のメインタイトルをカヴァーし12インチシングルで発表したのも、今となっては懐かしいです。
そのアレンジ自体は、当時の新しい「演奏形態」スクラッチのデモンストレーション以上の意味はなかったけれども、あらためてオリジナルの楽曲のカッコ良さを認識させてくれました。

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