2005年11月30日
『プレゼンス』 by レッド・ツェッペリン(PRESENCE by LED ZEPPELIN)
まずは、この奇妙なアルバム・ジャケットの話から。
デザインを担当したのは、かのヒプノシス(HIPGNOSIS)。
そのデザイン・コンセプトや制作過程などは、今や絶版になって入手困難となっている『アートワーク・オブ・ヒプノシス(原題:THE WORK OF HIPGNOSIS 'WALK AWAYRENE')』で、ヒプノシス(HIPGNOSIS)自らが語ってる。
イギリスのどこか、波止場が見はらせるレストランの様な場所で、英国中産階級を代表する様な家族4人が白いテーブルの上で囲んでいるのは、美味しそうなディナーではなくて、得体の知れない黒いオブジェ。
ジャケットを裏返すと似た様な光景が眼に飛び込んでくる。
出来の悪い男子生徒と彼を心配げに佇む幼馴染みの様な少女(ものの見事なブロンドの縦ロール)と、その男子生徒を慈しむかの様な中年の女性教師、その三人が囲んでいる教壇のテーブルにはやはり、漆黒の謎のオブジェ。
そしてさらにダブル・ジャケットを開くと...。
50年代〜60年代を思わせるノスタルジックな光景(つまりは過去:past)に、未来(=future)的なイメーの異物がいずれも存在(=presence)する。
例えて言えば映画『2001年宇宙の旅』の愛すべき狂言廻し、モノリスの様なイメージがそこにある。
しかも、ヒプノシス(HIPGNOSIS)自身の解説に寄れば、それは存在(=presence)と名付けられたオブジェが実は不在(=absence)の象徴でもあるという暗喩でもあるそうだ。
だがしかし、この黒い物体は過去(=past)と未来(=future)を斬り結ぶ現在(=present)と誤読する事もまた可能なのだ。
と、ちょっと某評論家の論調を真似てみたところで、本論はちょいと昔話、つまり過去(=past)の話から始まります。
ものづくし(click in the world!) 19.:
ヒプノシスの観た「プレゼンス」
(アートワーク・オブ・ヒプノシスでのジャケット制作スタッフクレジットより)
THE WORK OF HIPGNOSIS 'WALK AWAY RENE'
アートワーク・オブ・ヒプノシス
ヒプノシス &ジョージ・ハーディ(GEORGE HARDIE) 編著
奥田佑士 訳
宝島社
レッド・ツェッペリン
<プレゼンスPRESENCE>
1976年
スワンソング・レコード
ダブルジャケット
ハッセルブラッド 500C + 50mmレンズ
エクタクローム
フラッシュ撮影
背景はアールズ・コート・ボート・ショウ
ダイトランスファーによるヌキ合わせ
レタッチ:リチャード(RICHARD MANNING)
写真:ポー(オーブレー・パウエル:AUBREY POWELL)、ピーター(PETER CRISTPHERSON)
物体のデザインとグラフィック:ジョージ(GEORGE HARDIE)
ジャケット・デザイン:ヒプノシス、ジョージ・ハーディ(GEORGE HARDIE)
連載『プレゼンス』 by レッド・ツェッペリン(PRESENCE by LED ZEPPELIN)
第1回:I (本稿)
第2回:II
第3回:III
僕の最初のツェッペリン(LED ZEPPELIN)体験は、中学に入学した直後の事。昼休み給食時間中に放送される、放送部仕切の「音楽番組」。ジングル代わりにかけられたのが「移民の歌( IMMIGRANT SONG)」だった。
現在の音楽に関する学校教育の寛容と不寛容の現状は良く解らないけれども、当時は所謂ハードロックの放送は厳禁。当然、番組は教師達の手により即刻中止の憂き目にあう。ベイシティローラーズ(BAY CITY ROLLERS)やオリビア・ニュートン・ジョン(OLIVIA NEWTON-JOHN)やビートルズ(THE BEATLES)はノーチェックなんだけれども、とにかく大きな音がする「音楽=洋楽=ロック」は駄目だったみたい。つま恋でオールナイト・コンサートをやって世間(って言うか地元って言うかオトナ達って言うか)の顰蹙をかっていたのは、フォークの方々だったんですけれども?(当時、フォーク派とロック派が犬猿の仲だったのは、うちらだけかな?)
尤も、僕達の様な帰宅部で暇を持て余している中学生が遊びに行っていた、NHK=FMの地方局制作の「リクエストアワー(毎週土曜日15:00〜18:00放送)」でも、ツェッペリン(LED ZEPPELIN)と言えば、「天国の階段(STAIRWAY TO HEAVEN)」しかオンエアされなかったら、まぁ、そんなもんです(松下かをりさん、お元気ですか?)。
ちなみにピンク・フロイド(PINK FLOYD)は「ようこそマシーンへ(WELCOME TO THE MACHINE)」で、クリーム(CREAM)は「サンシャイン・ラブ(SUNSHINE OF YOUR LOVE)」、ストーンズ(THE ROLLING STONES)は「悲しみのアンジー(ANGIE)」だったかな? まぁ、リクエストされるされないに関わらず、バンドの代表曲というよりも、番組的にさしさわりのない楽曲が、事前に決まっていたんですね?
その後、僕はその放送部の先輩方経由で、当時の最先端を矢継ぎ早に聴かされて、自分達が最高学年になった頃には、放送部所属の悪友達と謀って、クイーン(QUEEN)やエアロスミス(AEROSMITH)やキッス(KISS)を教師達の眼を盗んで聴き漁る様になったのでした。
という話は、また今度ゆっくりしましょう。
で、なんでこんな昔話をよたよた書いてきたかと言うと、彼らが『プレゼンス(PRESENCE)』を発表したのが、'76年。で、間にライブアルバム(レコーディングは'73年のN.Y.マジソン・スクエア・ガーデン公演)であり同名映画のサウンドトラックである『永遠の詩 (狂熱のライヴ)(THE SONG REMAINS THE SAME)』(同年発表)を挟んで、スタジオ作はなんと'79年の『イン・スルー・ジ・アウト・ドア(IN THROUGH THE OUT DOOR)』まで、3年の沈黙期間があるってこと。
つまり、僕達のリアルタイムでのツェッペリン(LED ZEPPELIN)体験なんてのは幻想で、彼らは常に不在だったという事なんだ。例え、浴びる様にそれまで発表して来た作品8作を聴き倒して来たとしても。入手したばかりの中古のエレクトリック・ギターと成毛滋の「ロックギター講座」のカセットテープで「胸いっぱいの愛を(WHOLE LOTTA LOVE)」のリフをコピーしていたとしてもね。
と、いうのは本稿の帰属するカテゴリー”advenchers of t.g.chaung”の”『ブラック・アンド・ホワイト』 by ストラングラーズ”(black side & white side)でも書いた様に、英国で起こったパンクムーブメントの余波をまっこうから受けてしまった最初の世代が僕達。ツェッペリン(LED ZEPPELIN)不在の三年間で、音楽の聴き方やそこから派生するファッションからライフスタイルから思考様式まで、がらりと180°変わってしまったりします(おかげで友人も極端にへりましたが are friends electric?)。
全ての存在に対してyesとnoとレッテルを貼る作業、もしくはありとあらゆるものを敵と味方に峻別する作業に没頭していたのが、この3年間なんですよ、僕達の。例えば、当時の音楽の世界では、new waveに対してのold waveと過去のものやその手法をばっさりとやっていた時代、そんな時代を生き抜いて来ました。
そんな時代というか風潮にあって、果たして今回の主役ツェッペリン(LED ZEPPELIN)とこの作品の果たした役割は果たして、どうかというと? 残念。
次回、さらに次々回へと続きます。
ものづくし(click in the world!) 20.:
プレゼンス PRESENCE
by レッド・ツェッペリン LED ZEPPELIN
レッド・ツェッペリン(LED ZEPPELIN):
ジミー・ペイジ(Jimmy Page)
ジョン・ポール・ジョーンズ(John Paul Jones)
1.アキレス最後の戦い
ACHILLES LAST STAND
(Jimmy Page & Robert Plant;Flames of Albion Music,inc.,ASCAP)
2.フォー・ユア・ライフ
FOR YOUR LIFE
(Jimmy Page & Robert Plant;Flames of Albion Music,inc.,ASCAP)
3.ロイアル・オルレアン
ROYAL ORLEANS
(John Bonham,John Paul Jones,Jimmy Page & Robert Plant;Flames of Albion Music,inc.,ASCAP)
Released as the B-side of "Candy Store Rock"(Swan Song 70110) on 6/18/76.
4.俺の罪
NOBODY'S FAULT BUT MINE
(Jimmy Page & Robert Plant;Flames of Albion Music,inc.,ASCAP)
5.キャンディ・ストア・ロック
CANDY STORE ROCK
(Jimmy Page & Robert Plant;Flames of Albion Music,inc.,ASCAP)
Released as a single(Swan Song 70110) on 6/18/76.
6.何処へ
HOTS ON FOR NOWHERE
(Jimmy Page & Robert Plant;Flames of Albion Music,inc.,ASCAP)
7.一人でお茶を
TEA FOR ONE
(Jimmy Page & Robert Plant;Flames of Albion Music,inc.,ASCAP)
PRODUCED BY JIMMY PAGE
EXECTIVE PRODUCER:PETER GRANT
ENGINNERED AND MIXED BY KEITH HARWOOD.
TAPE ENGINEER:JEREMY GEE
SLEEVE BY HIPHNOSIS AND HARDIE
RECORDED AND MIXED IN NOVEMBER/DECEMBER 1975
AT MUSICLAND STUDIOS,MUNICH,GERMANY.
ORIGINALLY RELEASED AS SWAN SONG 8416 ON MARCH 31,1976.
DIGITALLY REMASTERED FROM THE ORIGINAL MASTER TAPES BY
JIMMY PAGE AND GEORGE MARINO AT STERLING SOUND.
SWAN SONG INC.DISTRIBUTED BY ATLANTIC RECORDING CORPORATION 75 ROCKEFELLER PLAZA,NEW YORK,NEW YORK 10019.
A Time Warner Company
(P) (C) 1976 ATLANTIC RECORDING CORPORATION
"The Object"(C) 1976 SWAN SONG Inc.
All Rights Reserved.Printed in Japan.
上記クレジットは、日本版紙ジャケットCDによるものです。
そのライナーノーツは、76年のLP発売当時の渋谷陽一の解説に加え、Hammill:Masahiro Shiga氏の解説、及び大屋尚子氏とMarie Nishimori氏の歌詞対訳が掲載されています。
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コメント
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