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2006年01月02日

『プレゼンス』 by レッド・ツェッペリン(PRESENCE by LED ZEPPELIN) III


例えば、いくつかの古典的なミステリは、まさしく主役の不在そのものが物語を牽引していきます。犯罪者であると同時に物語の探偵役をも引き受ける、M.ルブランMaurice Leblanc)の「アルセーヌ・リュパンArsene Lupin)・シリーズ」や、ミステリの常道をぎりぎりのところで踏みとどまっているA.クリスティーAgatha Christie)の諸作品(例:『そして誰もいなくなった』)等を挙げておきましょう。
いや、そんな具体的な作品や作者を挙げなくても、古典的な本格派ミステリの常道、「犯人はこの中にいる!」という名探偵の台詞を思い出せば、それでよいのかもしれません。

はたして、解決篇として書かれた(筈の)本稿、ものの見事に大団円とあいなりますでしょうか?

ものづくし(click in the world!)  19. -III:

ヒプノシスの観た「プレゼンス」

(アートワーク・オブ・ヒプノシスでのジャケット制作スタッフクレジットより)

THE WORK OF HIPGNOSIS 'WALK AWAY RENE'
アートワーク・オブ・ヒプノシス
ヒプノシス &ジョージ・ハーディ(GEORGE HARDIE) 編著
奥田佑士 訳
宝島社

レッド・ツェッペリン
プレゼンスPRESENCE
1976
スワンソング・レコード
ダブルジャケット
ハッセルブラッド 500C + 50mmレンズ
エクタクローム
フラッシュ撮影
背景はアールズ・コートボート・ショウ
ダイトランスファーによるヌキ合わせ
レタッチ:リチャード(RICHARD MANNING
写真:ポー(オーブレー・パウエル:AUBREY POWELL)、ピーター(PETER CRISTPHERSON
物体のデザインとグラフィック:ジョージ(GEORGE HARDIE
ジャケット・デザイン:ヒプノシス、ジョージ・ハーディ(GEORGE HARDIE

連載『プレゼンス』 by レッド・ツェッペリン(PRESENCE by LED ZEPPELIN)
第1回:I
第2回:II
第3回:III(本稿)

英国のパンク・ムーブメントに煽られて、僕たちは即座にその長い髪を切って短髪のツンツン・ヘアにした!って、声高に叫びたかったのだけれども、賛同者は以外と少なくて、世の中の大半は、聴き触りの良いフュージョンウエストコースト・ロックが全盛だったのでした。
だからこそ、僕たちは体制側にいるものの全てに唾吐きかけてやろうと意気込んでいたのが、15歳の冬
その半年前には、レッド・ツェッペリンLED ZEPPELIN)の映画『THE SONG REMAINS THE SAME ― 狂熱のライブ(原題:The Song remains The Same)』の圧倒的な音圧に圧倒されていたのにも関わらずね。

パンク・ムーブメントは音楽的には、それまでの主流だった、アルバム単位での作品構成や、他の音楽ジャンルのエッセンスを導入する事による複雑な楽曲構成という発想を一度帳消しにして、3分間のロックンロールや3分間のポップ・ミュージックの再生を意図したものでもありました。
だから、当時の、僕たちがやり玉にあげていたのが、冗長なソロプレイや、テクニック至上主義的な発想であって、レッド・ツェッペリンLED ZEPPELIN)の音圧とかギターリフ主体の楽曲構成等は、ある程度の評価を下していました。
要は、「天国への階段Stairway To Heaven)」の様な叙情性や物語性はNGだけれども、誰も「ロックンロール(Rock And Roll )」のボンゾ(Bonzo)ことジョン・ボーナムJohn Bonham)の最初のドラムストロークの凄まじさを否定する事は出来ませんでした。
否、どの曲を聴いてもボンゾBonzo)の存在感は圧倒的で、パンクニューウェイヴ系のアーティストで当時の英国の熱気をリアルタイムに持ち込んで来日した数少ない某アーティストのインタヴューにあったこんな発言を、僕たちは心の奥底に刻み込みました。曰く「スティーヴ・ガッドSteve Gadd)を聴くな、ボンゾBonzo)を聴け!」―確か、XTCエックスティーシー)のアンディ・パートリッヂ(Andy Partridge)だと思ったんだけれども、自信ないや。ごめん)

と、言う訳でオールド・ウェイヴと当時揶揄されたビッグスター達の中で、パンクニューウェイヴ世代にリスペクトされた数少なアーティストのひとつが、レッド・ツェッペリンLED ZEPPELIN)だったわけです。おそらくそれは、全盛期のロバート・プラントRobert Plant)のファッションを完全コピーして登場したデイヴ・リー・ロスDavid Lee Roth:当時ヴァン・ヘイレン Van Halen)や、HR/HMの再興を賭けて登場した一連のNWOBHM(ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィー・メタル)のバンド群の様なレッド・ツェッペリンLED ZEPPELIN)直系と思われるアーティストよりも、その受けた影響は大きかった筈です。
それは、大きな音でギターリフを切り刻む様に弾く事だったり、ひたすら激しいビートを叩き突ける事だったり、特に後者は機材の発展により、生のドラムス以外のエレクトロニクス・サウンドを導入するという方法論も追求されていくのですが(いずれこのブログのどこかで個別かつ具体的に影響を受けたバンド/アーティストを取り上げる事になるので、ここではバンド名等は出さない)。

今、思うに僕たちが待ち望んでいた3年間、空想の中で練り上げていたレッド・ツェッペリンLED ZEPPELIN)の新作というものは、ひたすらハードでヘヴィで、例えて言えば剃刀の様な鋭利な切れ味と鉈の様な肉体的な暴力性、この相容れないふたつの要素を持つ音ぢゃあないかと。その様に思います。

'80年代の音楽的な冒険の果てに登場した、ミュージシャン/プロデューサーの、スティーヴ・アルビニSteve Albini)をここでは挙げておきましょう。ビッグ・ブラックBig Black)〜レイプマンRapeman)〜シェラックShellac)といった自己のバンドは勿論、ニルヴァーナNirvana)やピクシーズPixies)やZeni Gevaゼニゲバ)に代表される彼がプロデュ−スしたサウンド構築は、個人的にはその理想型に近いと思います(10数年前に初来日した際に、お会いしましたが、凄い神経質そうなヒトという印象が強かった)。
その後、レッド・ツェッペリンLED ZEPPELIN)解散を経て再び邂逅したジミー・ペイジJimmy Page)とロバート・プラントRobert Plant)が、ジミー・ペイジ&ロバート・プラントJImmy Page & Robert Plant)としての作品のプロデュースをスティーヴ・アルビニSteve Albini)に依頼した際には、非常に驚きましたが(作品は『ウォーキング・イントゥ・クラークスデールWalking Into Clarksdale)』)。

ものづくし(click in the world!)  20.-III:

プレゼンス PRESENCE

by レッド・ツェッペリン LED ZEPPELIN


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レッド・ツェッペリン(LED ZEPPELIN):
ジミー・ペイジ(Jimmy Page)

ロバート・プラント(Robert Plant)

ジョン・ポール・ジョーンズ(John Paul Jones)

ジョン・ボーナム(John Bonham)


1.アキレス最後の戦い
 ACHILLES LAST STAND
 (Jimmy Page & Robert Plant;Flames of Albion Music,inc.,ASCAP)

2.フォー・ユア・ライフ
 FOR YOUR LIFE
 (Jimmy Page & Robert Plant;Flames of Albion Music,inc.,ASCAP)

3.ロイアル・オルレアン
 ROYAL ORLEANS
 (John Bonham,John Paul Jones,Jimmy Page & Robert Plant;Flames of Albion Music,inc.,ASCAP)
 Released as the B-side of "Candy Store Rock"(Swan Song 70110) on 6/18/76.

4.俺の罪
 NOBODY'S FAULT BUT MINE
 (Jimmy Page & Robert Plant;Flames of Albion Music,inc.,ASCAP)

5.キャンディ・ストア・ロック
 CANDY STORE ROCK
 (Jimmy Page & Robert Plant;Flames of Albion Music,inc.,ASCAP)
 Released as a single(Swan Song 70110) on 6/18/76.

6.何処へ
 HOTS ON FOR NOWHERE
 (Jimmy Page & Robert Plant;Flames of Albion Music,inc.,ASCAP)

7.一人でお茶を
 TEA FOR ONE
 (Jimmy Page & Robert Plant;Flames of Albion Music,inc.,ASCAP)

PRODUCED BY JIMMY PAGE
EXECTIVE PRODUCER:PETER GRANT
ENGINNERED AND MIXED BY KEITH HARWOOD.
TAPE ENGINEER:JEREMY GEE
SLEEVE BY HIPHNOSIS AND HARDIE
RECORDED AND MIXED IN NOVEMBER/DECEMBER 1975
AT MUSICLAND STUDIOS,MUNICH,GERMANY.
ORIGINALLY RELEASED AS SWAN SONG 8416 ON MARCH 31,1976.
DIGITALLY REMASTERED FROM THE ORIGINAL MASTER TAPES BY
JIMMY PAGE AND GEORGE MARINO AT STERLING SOUND.

SWAN SONG INC.DISTRIBUTED BY ATLANTIC RECORDING CORPORATION 75 ROCKEFELLER PLAZA,NEW YORK,NEW YORK 10019.
A Time Warner Company
(P) (C) 1976 ATLANTIC RECORDING CORPORATION
"The Object"(C) 1976 SWAN SONG Inc.
All Rights Reserved.Printed in Japan.

上記クレジットは、日本版紙ジャケットCDによるものです。
そのライナーノーツは、76年のLP発売当時の渋谷陽一の解説に加え、Hammill:Masahiro Shiga氏の解説、及び大屋尚子氏とMarie Nishimori氏の歌詞対訳が掲載されています。

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