2006年02月12日
映画バトン
取急ぎ、ここでは設問を先に例示しましょう。
1.PCもしくは本棚に入っている『映画』
2.今、妄想している『映画』は?
3.最初に出会った『映画』は?
4.思い入れのある『映画』は?
5.次に回す人。
ものづくし(click in the world!) 24. :映画バトン
1.PCもしくは本棚に入っている『映画』
・蓮實重彦の映画に関する著作数冊。
・竹内博他の特撮関連の写真集、研究書の類。
・MOOK『新映画宝庫』のシリーズ。
・『ギーガーズ・エイリアン』(H.R.ギーガー 著)。
・『ハリウッドバビロン I』 『同 II』 (K.アンガー 著)。
・『ルイズ・ブルックスと「ルル」』(大岡昇平 著)。
・雑誌『VISAGE』の「J.ボンド特集」と「J.タチ特集」
・雑誌『太陽』と『別冊太陽』の映画関連の特集
押入の中には、映画のパンフレットやらペヨトル工房の映画関連の特集号がある筈なんだけれども...。
2.今、妄想している『映画』は?
彼らにこんな映画創って欲しいリストでいいのかしら? そういう解釈の下に、妄想な『映画』をリストアップします。
●ティム・バートン(Tim Burton)監督作品
原作『イーディ― '60年代のヒロイン』(J.スタイン、G.プリンプトン 著)
イーディ・セジウィックとアンディ・ウォーホルのファクトリーの物語を映画化。
アンディ・ウォーホルの”アトリエ”ファクトリーに出入りするありとあらゆる”スーパースター”や”フリークス”達の物語。そして、彼らと邂逅し、時代の寵児となると同時に顛落していくイーディ・セジウィックの悲劇を、バートンならではのフリーク趣味を大爆発させたポップな作品として堪能したい。
●デヴィッド・リンチ(David Lynch)監督作品
ブライアン・ジョーンズのモロッコ紀行とその死を映画化。
ローリング・ストーンズ結成時の実質的なリーダーでありながらもその地位を追われ、麻薬禍での逮捕と裁判の結果、ぼろぼろに擦り切れた神経を引きずりながら向かった異境の地、モロッコでの神秘体験。その直後、彼はバンドを脱退し謎の死を遂げる。彼の地で収録したジュジュ・ミュージックに様々な音響処理を加えた唯一のソロ名義の作品『ブライアン・ジョ-ンズ・プレゼンツ・ザ・パイプス・オブ・パン・アット・ジャジューカ』を残して。そんな彼の数日のモロッコでの神秘体験を、リンチ独自の神経症的な映像で綴る。
メイン・テーマ曲に、ブライアンの神話を主題にすえたサイキックTVの「god star」をフィーチャ−。
●ブライアン・デ・パルマ(Brian De Palma)監督作品
『デビルマン』(永井豪 作)の一エピソードを映画化。
”不動明=デビルマンの正体を飛鳥了の裏切?によって暴露されて、牧村家を追われてから暴徒が牧村家を襲う直前まで”その数時間を描く。つまり、映画は、冒頭を不動明の変身シーンが飾り、牧村家が暴徒に襲撃される直前のシーンで終幕する。本編は、じりじりと迫る危機的状況に、焦り、苛立ち、恐怖に苛まされるヒロイン牧村美樹の激しい心の葛藤とそれを乗り越え暴徒と対峙するまでのサスペンスを描く事になる。牧村邸から決して屋外へ出る事のない密室劇をデ・パルマのカメラワークできっちりと、そして、その向こうにある心理劇をも描写して欲しい。
●テリー・ギリアム(Terry Gilliam)監督作品
『百億の昼と千億の夜』(光瀬龍 著)の完全映画化。
本作品のヴィジュアル化と言えば萩尾望都のマンガ作品があるけれども、あれに囚われない、新しい戦いの神、阿修羅王を描いて欲しい。個人的には、キリスト教とイスラム教という一神教同士の争いに疑義を投じる意味でも。この世界を消滅させるプログラムを作成した「シ」に、無限の戦いを挑む彼らの物語を観てみたい。永劫の時を刻む物語を、ギリアム独特の悪夢的なヴィジョンとブラックユーモアにのせて。
●北野武監督作品
音楽のドキュメンタリー作品を。
マーティン・スコセッシの『ラスト・ワルツ』やヴィム・ヴェンダースの『ブエナ☆ビスタ☆ソシアル☆クラブ』や ジョナサン・デミ の『ストップ・メイキング・センス』やバート・スターンの『真夏の夜のジャズ』、それらと比肩する様な作品を所望します。
ちなみにこれらの5作品以上に、最期の、そしてホントの「妄想している『映画』」は、僕自身が製作に関わる映画なんだけれどもねぇ。
3.最初に出会った『映画』は?
『大怪獣ガメラ』(1965年):湯浅憲明監督作品
当時の自宅から歩いて5分とかからない映画館に掲示されている次回上映作のポスターを発見し、同居している祖母の袖を引っ張って、これが観たいと大騒ぎした、としちゃん3才のエピソード。
ちなみに最初の字幕付きの洋画は1967年『007は二度死ぬ』。以来、斜陽化する業界の憂き目にあって、その映画館が閉館するまでの数年間は、特撮映画とアニメ映画の殆どはそこで観倒しました。
小学校高学年になると、3才下の弟を連れてバスに乗り繁華街の映画館に通う。パニック映画ブームもチャップリンのリバイバルも、カンフー映画もSFブームもそんな行動様式の中で、流れる様に溢れる映像を体験して行きました。
だから、『ジョーズ』を観に、きっちりと校則を遵守して学生服を着込み、チケット売り場に数人で群れている同級生がすごく幼く観えましたよ。映画館なんて単なる近所の遊び場で駄菓子屋と一緒、決してよそいきの場所ではありませんでした。
4.思い入れのある『映画』は?
単に数作品羅列するのもゲイがないので。
『映画』ならではとか、『映画』独自の、という作品はおそらく他の方々も挙げるでしょう。だから、原作付きであって、原作を凌駕もしくは原作に潜む新しいヴィジョンを提示した作品に限定します。だから、必然的に原作も体験している事が前提です。
結果的に、JLGもA.ヒッチコックもD.ジャーマンもJ.ジャームッシュも小津も黒澤もラングもJ.タチもいないリストになってしまいました。
●『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』(1996年):
押井守監督作品
原作『攻殻機動隊』(1991年):士郎正宗 作
原作の持つサイバー・パンク・テイストをものの見事に咀嚼昇華して、自己と他者の領域の曖昧さを描いた作品。己がいかに危うい存在であるかを提示した前半部のエピソードの後に突入する神学論争の様な「人形使い」との対話。両性具有のヒロイン、草薙素子は今、どこに?
●『ザ・フライ 』(1986年):
D.クローネンバーグ監督作品
原作『蝿』(1957年):G.ランジュラン 著
参考『蝿男の恐怖』(1958年):K.ニューマン監督作品
観た順番から書いて行くと、『蝿男の恐怖』の、変身してしまった科学者の複眼から観た主観ショットとラストシーンに登場する”白い頭のハエ”の後味の悪さをずっと引き摺っていたら、僕と同じ様に引き摺っていたと思しきD.クローネンバーグが、ぶっとい物語にしかも大純愛映画に仕上げてしまった。原作もカフカ的な悪夢を描いたSFの古典的名作です。
●『恋に落ちたシェイクスピア』(1998年):
J.マッデン 監督作品
原作『ロミオとジュリエット』(1595年前後):
W.シェークスピア 著
参考『ウエスト・サイド物語』(1961年):R.ワイズ監督作品
ロミオのごとき行動をするシェークスピアが、自らの心情をロミオではなくてジュリエットに投影して戯曲を書き進めて行く、それだけで面白いんですよね。作者の中に潜む様々な登場人物が生まれ、戯曲に描かれ、そして演出されていく過程をサイドストーリーに、物語はテンポよく初演の日を迎える。そして...。
同じ作品を典拠にした『ウエスト・サイド物語』に関しては、まぁ、敢て書かなくても良いでしょう。名作です(こちらを参照願います)。
●『マタンゴ』(1963年):
本多猪四郎監督作品
原作『夜の声』(1907年):W.H.ホジスン 著
原作は、ヒトでなくなったものとの遭遇を幻想的に描き出した短編。それをモチーフだけ寸借して、人間のエゴを極限までに描き切ったのがこの映画。少年時に観て、事あるごとに魘され続けた映画でもあります。水野久美演じる関口麻美に潜む女の魔性は、もしかしたらトラウマになっているかも?
●『Tommy トミ−』(1975年):
K.ラッセル監督作品
原作『Tommy 』The Who(1969年)
もともとはThe Whoのコンセプト・アルバムをロック・オペラ化して映像化したのがこの作品。
「Amazing Journey」や「Acid Queen」や「Smash The Mirror」での奔放に溢れる過剰な映像美はこの監督ならでは。原作者P.タウンゼントの観念的・理念的な作品をここまでポップに描く手法は見事です。ちなみに、the whoの他のメンバーもこの映像化作品を観て始めてこの物語を理解出来たと言っています。
次点として以下のものを挙げておきます。
『惑星ソラリス』A.タルコフスキー監督作品
(原作『ソラリスの陽のもとに』S.レム 著)、
『禁断の惑星』F.M.ウィルコックス監督作品
(原作『あらし』W.シェークスピア 著)
『ブレードランナー』R.スコット監督作品
(原作『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』フィリップ K.ディック 著)
『ホーリー・マウンテン』A.ホドロフスキー監督作品
(原作『類推の山』R.ドマール 著)
5.次に回す人。
『映画』を観る口実に女性を誘った事は幾度かあるけれども、その逆はありません。お駄賃の入場料欲しさに弟を引き連れて行った事は幾度かあるけれども、その逆はありません。試写会はカップルでの入場可なので、二人で行く事はあります。
『ロッキー・ホラー・ショー』等の数少ない例外を除けば、『映画』を観る事は孤独な作業です。
だから、ここでもひとり。
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コメント
>カイトさん
コメントありがとうございます。
観たい映像作品と観たい映画監督を挙げて、重複しないようにパッチワークしていった結果です。
だから、個人的にはものによっては入替可能な作品もあるので、カイトさんの様にハマってもらえるとは思ってもみませんでした。
基本設定やキャスティングやここから先のディテールは、かいもく見当もつきません。なにせ妄想ですから。
北野監督は、物語を物語るという制約から解放されたなら?という視点です。だから、必ずしも素材は「音楽」でなくてもいいんですが、ある意味、最も映像化が困難なのは「音楽」でしょ?という発想です。ちょっとこれは真剣に期待しています。
今回のバトン楽しかったです。
バトンをフって頂きありがとうございました。
投稿者: たいとしはる feat.=OyO= | 2006年02月15日 12:22
妄想映画・・・
どれもこれも、実現しそうなほどのリアリティがありますね。
デヴィッド・リンチの作品、非常に気になりました。
恥ずかしながら、ローリングストーンズもブライアン・ジョーンズも
良く知らなかったので、調べてみたのですが・・・
調べていくうちに、=OyO=さんの感じているものが僅かながら伝わってきて、
色々と映像が浮かびました。
ブライアン・ジョーンズを演じる役者は、誰が良いでしょうね。
キャスティング・フェチとしては、そこも気になってしまいました。
それにしても、これはリンチワールドにピタリとハマりそうです。
時代考証を綿密にやって映像化するのか、それとも、現代に置き換えてやるのかも気になりました。
デビルマン×デ・パルマ・・・。
こんな完璧な相性ってあるんでしょうか!
それにしても、北野武は誰を選ぶのでしょう・・・。
投稿者: カイト | 2006年02月15日 04:57