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2006年02月23日

『ぼくの伯父さん』をNHK-BS2で観る

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ジャック・タチJacques Tati)の存在をしったのは、結構遅くて社会人になってからです。
ちなみにJLGは、ローリングストーンズセックスピストルズが、中学生の時に教えてくれた。
そのジャック・タチJacques Tati)という呪われた映像作家を知るきっかけになったのは、MEN'S BIGIの不定期刊行誌『VISAGE』での一冊まるごとタチな『ジャックタチ特集「ぼくも伯父さん」』だった。その後、程なくして今は亡きシネヴィヴァン六本木ジャック・タチJacques Tati)の上映特集がかかってそこでまるまる一日費やして、『ぼくの伯父さんmon oncle)』を含め、様々なジャック・タチJacques Tati)を体験した、という訳。

脚注:JLGは、1968年、ローリングストーンズのレコーディング風景を撮影し、映画『ワン・プラス・ワン』を発表する。セックスピストルズは、彼らの最初にして最後のアルバム『Never Mind the Bollocks Here's the Sex Pistols』を1977年に発表する。その邦題が『勝手にしやがれ』。沢田研二の起死回生のヒット曲のタイトルでもあるんだけれどもね。

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ジャック・タチJacques Tati)を観る為には勿論、制度としての「映画」、つまり大きなスクリーンを眼前に暗闇に押し黙って身を潜めるのが望ましいのだけれども、これは彼の作品に限っての話ではない。彼の作品を観るには、できれば良いオーディオ環境で、それが難しいのならば、外部の音を遮断出来る環境が望ましい。
と、いうのは、彼の作品は映像を観る事と対等、もしくはそれ以上に、その音響を聴くという事が大事なのかもしれないからだ。
近代的な設備の工場で流れ続ける空調設備の音、社長秘書が小走りに歩くハイヒールの音。間抜けな彫像の魚の口から吹き出す噴水の音。足踏み草刈り機のせわしない騒音。犬の吠え声、小鳥のさえずり、馬の嘶き、...それらがこのコメディー(って言っていいのかな?)の笑いの部分を演出するのは勿論、文字どおりの映画の主題の通底奏音(=通底騒音?)を奏でているのだ。
ジャック・タチJacques Tati)自らが演ずる主人公ユロ氏(=伯父さん)の住む下町の広場で繰り広げられる様々な会話(それらは字幕化されない)に埋もれる主人公の会話(それは字幕化される)を聴けば、台詞の重要度はかなり低い。 仏語を解しない僕は字幕に頼らざるを得ないから、物語の進行を言葉(=台詞≒字幕)に頼ってしまうので、ジャック・タチJacques Tati)の意図する処は、かなり汲み取りにくくなってはいるが。
例えば、増築に次ぐ増築で、結果的に異様に入り組んだ構造になってしまったユロ氏のアパルトマンのシーン。カメラはアパルトマン全景を捉えて微動だにしない。最上階にある己の部屋に辿り着くまでのユロ氏のゆったりとした歩みを観ればいい。階段を登ったり降りたり、廊下を右端から左端に渡り、やっと部屋に辿り着き、玄関口の桟に隠した鍵を探り当てて、やっと自室に入る。ここまででワンカット(映画とは、ものが移動するその移動をこそ美しいと再発見する為の装置である、と言ったのは誰だろう?)。
それから、何とも微笑ましい小鳥のさえずりのコントが続くのだけれども、そこから先は「映画」を観てね?


ユロ氏の後ろに映り込んでいるのがそのアパルトマン。

PS:音へのこだわりと言うと、ジャック・タチJacques Tati)へのあから様なオマージュを捧げたJLGの『右側に気をつけろ』があるのだけれども、僕は、小津の『お早よう』を挙げたい。この映画でのおならのエピソードは、なんともジャック・タチJacques Tati)的で、そのヨーロッパの春の陽光を思わせる色彩感覚と共に、どこかで誰かがきちんと論考していないかな?

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