2006年04月26日
『ファイヴ・ライヴ ヤードバーズ』 by ヤードバーズ(Five Live Yardbirds by Yardbirds)
所謂三大ギタリストを輩出したヤードバーズ(Yardbirds)のファースト・アルバムにしてマーキー・クラブ(the Marquee Club)でのライブ・レコーディング・アルバム(当時の雰囲気をプンプン漂わせた言い廻しをすれば実況録音盤)。
ギタリストは勿論、エリック・クラプトン(Eric Clapton)です。
註:一応、ちゃんと説明しておくと、三大ギタリストとは、本作参加のエリック・クラプトン(Eric Clapton)、ジェフ・ベック(Jeff Beck)、そしてジミー・ペイジ(Jimmy Page)の三人。この三人があい前後して参加したバンドが今回の主役、ヤードバーズ(Yardbirds)なんです。
尤も、僕が洋楽を聴き始めた1970年代中盤には既に「もはや三大ギタリストの呼称はいらない!」[ジェフ・ベック(Jeff Beck)1976年の作品『ワイアード(Wired)』の惹句より]と言われていたくらいだから、ギタリスト達はその軛から逃れ、己の音楽性のままに大活躍していた。ジェフ・ベック(Jeff Beck)は今挙げた『ワイアード(Wired)』でギター小僧達のヒーローだったし(僕もコピーしてました生意気にも)、ジミー・ペイジ(Jimmy Page)はレッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)で『プレゼンス
(presence)』の頃。そして、エリック・クラプトン(Eric Clapton)も翌1977年に『スローハンド(Slowhand)』を発表と、各々が脂の乗り切った時期です。
問題は、その三大ギタリストの呼称に引き摺られるまま、きちんと評価されていなかったヤードバーズ(Yardbirds)の方なんです。最も、1968年に解散してしまったから仕様がないと言え仕様がないのだけれども。
でも、エアロスミス(Aerosmith)による「トレイン・ケプト・ア・ローリン(train kept a rollin')」(1974年発表『飛べ!エアロスミス(Get your Wings)』収録)や「シンク・アバウト・イット(think about it)」(1979年発表『ナイト・イン・ザ・ラッツ(Night In The Ruts)』収録)のヤードバーズ(Yardbirds)・ナンバーのカヴァーから彼らを知った身からすれば、なかなか彼らの作品を入手出来ないというフラストレーションはかなりありました。NHK-FM『ヤング・ジョッキー』(DJ:渋谷陽一)でオンエアされた二曲、「幻の10年(Happenings Ten Years Time Ago)」と、ミケランジェロ・アントニオーニ(Michelangelo Antonioni)監督の映画『欲望(Blow Up)』(1966年発表)での「ストロール・オン(stroll on)」をエアチェックしたカセットテープを死ぬ程聴き倒しましたよ。ちなみに、いずれの曲もジェフ・ベック(Jeff Beck)とジミー・ペイジ(Jimmy Page)のツイン・リード体制。
余談だけれども、北九州出身の友人は鮎川誠の「レモンティー」(オリジナルはサンハウス)で彼らを知ったと言ってたな。
それはともかく。
国内盤で流通していたオリジナル盤は『ロヂャー・ジ・エンジニア(Roger the Engineer)』(1966年発表)だけで、この作品に収録されていた「ジェフズ・ブギー(Jeff's Boogie)」での、ジェフ・ベック(Jeff Beck)のプレイを必死こらこいてコピーしてましたって、やっぱり、ギタリスト目当てで聴いていた、としちゃん16才の春。ロック名盤集では必ずリストアップされて、若きエリック・クラプトン(Eric Clapton)のプレイを堪能出来る(筈の)本作『ファイヴ・ライヴ ヤードバーズ(Five Live Yardbirds )』を聴く機会はなかなか訪れませんでした。
で、やっと1983年に廉価国内盤で再発された結果、入手出来た本作。
ひたすら熱い。
MCハマス・グライミス(Hamish Grimes)によって、メンバー一人一人がステージに呼び込まれるところから、当時の活気というか熱気が伝わってくる。勿論、ボーカリストはバンドの看板であり花だから、キース・レルフ(Keith Relf)に一際歓声というか嬌声が上がるのは当然だとしても、既に名プレイヤーとしての評価を確立していたエリック・クラプトン(Eric Clapton)への歓声もかなりのものである。ジャケットでもヴォーカリストを差し置いて、センターに位置しているし。
演奏されているのは、ボ・ディドリー(Bo Diddley)の3曲を筆頭に、チャック・ベリー(Chuck Berry)、スリム・ハーポ(Slim Harpo)、ハウリン・ウルフ(Howlin' Wolf)、ソニー・ボーイ・ウィリアムソン I(John Lee "Sonny Boy" Williamson )、アイズレー・ブラザーズ(Isley Brothers)、エディ・ボイド(Eddie Boyd)、ジョン・リー・フッカー(John Lee Hooker)といった錚々たる先達の全曲カヴァー(せっかくなので、書き出してみました。誰がどの曲のオリジネイターなのかは、下記クレジットを参照願います)。
で、話を元に戻して、当時からギター・ヒーローの名を欲しいままにしていたエリック・クラプトン(Eric Clapton)だけれども、当然の話、今現在のギター・プレイとも違うし、その一方で超絶プレイが聴けるという訳ではない。聴くべきなのは。己の大好きなミュージシャンの楽曲を演奏する楽しさと嬉しさとそしてそれらの想いをこれまでもかというくらいに、マーキー・クラブ(the Marquee Club)に来場した観客達に叩き付けているその熱気だ。
個人的には、エリック・クラプトン(Eric Clapton)というミュージシャンのギタリストとしての頂点は、ジャック・ブルース(Jack Bruce)とジンジャーベイカー(Ginger Baker)に歪みあい挑発しあっていたクリーム(Cream)時代だと思っているんで、そこに至る路をまっしぐらにかけ上ろうとする姿勢が、物凄く潔い。一応。付け加えておくと、クリーム(Cream)以降は、一ギタリストとしてよりも、もう少し別のフィールドでの評価が加わると思っています、例えばシンガーとしてのとかね。
だから、ホントはエリック・クラプトン(Eric Clapton)云々というポジショニングで聴くべき作品ではないと思うんです。1964年のロンドンのシーン最前線にいたバンドの、全く加工されていないナマ(=Live)を真空パックした作品として、僕達はこの作品を聴くべき。
本作発表後、音楽性の相違を理由に、エリック・クラプトン(Eric Clapton)はヤードバーズ(Yardbirds)を脱退。新たなギタリストとしてジェフ・ベック(Jeff Beck)を迎え、ポップ・フィールドに進出するバンドに対して、エリック・クラプトン(Eric Clapton)は、より濃い音楽探究の路を進む...、だからこそ、音楽的なエゴに目覚める直前の、ある意味、音楽そのものに素直に対峙する若いミュージシャン達の姿を、じっくりと聴きましょう。例えば、ポール・サミュエル・スミス(Paul 'Sam' Samwell -Smith)のぶぅんぶぅん唸るベース。
ところで、ヤードバーズ(Yardbirds)ってのは、チャーリー・パーカー(Charlie Parker)の愛称で....ってのは、いつも言及し忘れているから、ここでメモ程度に書いておこう。
それは、チャーリー・パーカー(Charlie Parker)達がイノベイトしたバップ(bop)に彼らに若きヤードバード達(Yardbirds)が音楽的に影響されたというよりも、チャーリー・パーカー(Charlie Parker)に影響されたビートニクス(beatniks)の行動規範に影響されたと見るべきぢゃあないだろうか? だれか詳しいヒト教えて下さい。
ものづくし(click in the world!) 28.:
『ファイヴ・ライヴ ヤードバーズ』 by ヤードバーズ(Five Live Yardbirds by Yardbirds)
Five Live Yardbirds by Yardbirds
ファイヴ・ライヴ ヤードバーズ by ヤードバーズ
Sid One
1.イントロダクション・バイ・ハミス・グライムス
INTRODUCTION BY HAMISH GRIMES
2.トゥー・マッチ・モンキー・ビジネス
TOO MUCH MONKEY BUSINESS
(Berry)
3.アイ・ゴット・ラヴ・イフ・ユー・ウォント・イット
I GOT LOVE IF YOU WANT IT
I GOT LOVE IF YOU WANT IT(Moore)
4.スモークスタック・ライトニン
SMOKESTACK LIGHTNIN'(Burnett)
5.グッドモーニング・リトル・スクールガール
GOODMORNING LITTLE SCHOOLGIRL(Demarais)
5.リスペクタブル
RESPECTABLE(Isley Brothers)
Side Two
1.ファイヴ・ロング・イヤーズ
FIVE LONG YEARS(Boyd)
2.プリティー・ガール
PRETTY GIRL(MacDaniel)
3.ルイーズ
LOUISE(Hooker)
4.アイム・ア・マン
I'M A MAN(Pomus - Shuman)
5.ヒア・ティス
HERE 'TIS(MacDaniel)
Recorded Live at the Marquee Club , London,W.1.
Sound Engineer : Philip Wood.
Photography : Richard Rosser.
Produced by GIORGIO GOMELSKY
Recorded first published 1964
キース・レルフ/KEITH RELF Vocal / Harmonica
ポール・サミュエル・スミス/PAUL 'SAM' SAMWELL-SMITH Electric Bass Guitar
クリス・ドレヤ/CHRIS DREJA Rhythm Guitar
ジム・マッカーシー/JIM McCARTY Drums
エリック・クラプトン/ERIC 'SLOWHAND' CLAPTON Lead guitar
Liner notes by GIORGIO GOMELSKY
Charley Music Ltd.
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