細かく観て行く。

01.W杯開催期間中である事
02.なおかつ試合がない日である事
（日本時間で言えば、前日に試合がない事）
サッカー熱、W杯の余熱が下がらない内に、しかも、サッカーのニュースとしてのファースト・プライオリティを得る為には当然考慮しなければならない事である。１週間前ならば、16強が出揃った決勝トーナメントのスタート時で、その”勝てば次の決戦地、負ければ帰国”の熱さの中に紛れてしまう可能性がある。そして、この１週間後では優勝国が決定してしまう。
つまりは、01.と02.のふたつの条件を満たした上に、さらに、サッカーのニュースとしてのファースト・プライオリティを得る為にはこの日しか最も効果的な発表の機会はなかったかもしれない。日時が経過すれば、次々と代表引退や現役引退を発表する選手達も出てこよう（既にベッカムのイングランド・チーム・キャプテン降番やロベルト・カルロスの代表引退発表も始っている）。また、国内にあっては新たな代表監督による新体制造りに、報道の主軸が移ってしまう（今の最も注目されているのがオシム・ジャパン？だ）。

03.月曜日である事
04.21:00台での発表である事
このタイミングを観れば、各TV局の報道番組でどれだけ大きく扱われるかという事を狙っている事が解る。これよりも早ければ第１報は、主婦層に主眼を置いたややバラエティ感の強い夕刻のニュース番組になるだろうし、逆に遅ければ第１報は深夜帯のスポーツニュース番組となる。
ちなみに新聞をターゲットとするならば、一般紙だったら夕方から夜の早い時間帯に発表しなければ翌日の朝刊には間に合わない事もある。（最も今回は号外も出ちゃったけどね）
なお、月曜日にした理由は、政治面や経済面での大きな動きが最も少ない平日だからです。

05.記者会見は開かず、ネット上での自身の文章による発表である事
通常は記者会見をセッティングして各報道媒体を一ケ所に招待しての発表となるわけだけれども、その場合、どうしても事前に情報が漏れてしまう。よしんば、情報漏洩でなくとも記者会見という場を設定するだけで報道媒体サイドに憶測を呼び込んでしまう可能性がある。
ここまで読んで、何故それがマズイノ？っていうヒトに説明すると、要は情報の鮮度と衝撃度が薄れちゃうから。事前に予測しうる内容の会見だったら、己の担当番組の中でのポジションはどんどんと位置付けられてしまう。逆に、衝撃的で直前に入って来たニュースは、番組冒頭に据えざるを得ない。
そして、ネット上での一方的な発表にする事によって、中田英寿本人に過大なストレスを与える必要もないし、編集等によって過った情報操作をされる心配もない（例えば、リアルタイムで国会中継を観て、その同じ映像が放送局や放送番組が変わって行く事によって随分と異なった印象や異なったメッセージを与える事がある）。

ちなみに昨夜の僕の体験は以下の通り。
21:00過ぎにニュース速報として、一報が入る。約1時間後、『報道ステーション』でのトップ項目。1時間前の発表ならば、通常ならばそれを伝える会見の映像だが、今回はそれもない。ただ只管、中田英寿本人が書いたネット上の「人生とは旅であり、旅とは人生である」と題された記事を古舘キャスターが読み進めるだけだ、映像も、画面に映し出されたネット上の文字列しかない。文章を全文読了後、コメンテイターも交えて歯がゆい会話をするだけで、「中田英寿現役引退」というニュース報道は終わった。番組冒頭から正味20分程の破格の扱い。
日本サッカーのニュース報道で一選手の引退報道をこんなに大きく扱った事があっただろうか（扱わさせられた事があっただろうか）？繰り返しになるけれども、単純に中田英寿からの最後の挨拶？を読んだだけなのだ。

p.s.中田英寿の現役引退によって世界的なレベルで世代交代が加速度的に始る様な気がします。