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2006年07月21日

追悼シド・バレット:wish you were here,the crazy diamond


ピンク・フロイドPink Floyd)の1975年の作品『炎〜あなたがここにいてほしい〜(原題:Wish You Were Here)』のメイン・モチーフとなっている2曲「クレイジー・ダイアモンド(shine on you crazy diamond - lyrics)」と「あなたがここにいてほしい(wish you were here)」は、このバンドの創始者でありメイン・ソングライターであったシド・バレットSyd Barrett)に捧げられた曲である。
その彼が2006年7月11日に永眠した。享年60歳。

尤も、バンドのデヴュー作『夜明けの口笛吹き(原題:The Piper at the Gates of Dawn)』発表直後の1967年あたりから精神変調を来し、その結果としての奇行からバンドを追われて以降、殆ど現実世界との接点を失っていたのだけれども。

追った方のバンドは、ロジャー・ウォーターズRodger Waters)が巧みなリーダーシップを発揮して、彼の論理的思考とそれを具体的に(しかも情緒的に)表現するバンドの演奏力[特にシド・バレットSyd Barrett)の後を継ぐ形で加入したデイヴ・ギルモアDavid Gilmour)の印象的でかつ叙情的なギター・ソロ]を得る。その結果、1973年発表の『狂気(原題:Dark side of the Moon)』での作品への高い評価とそれを裏付けるにたる圧倒的なセールス(全米チャートに570週にわたってランク・イン)、つまりクリエイティビティとビジネス両面での大成功を獲得したビッグ・バンドへと至る。
一方の、追われた方のシド・バレットSyd Barrett)は、1970年に2枚の優れたソロ・アルバム『帽子が笑う・・・不気味に(原題:The Mad Cap Laughs)』と『その名はバレット(原題:Barrett)』を残して完全にシーンから姿を消してしまう。

それでも彼の存在そのものが完全に忘却されなかったのは、彼の輝き続ける作品と、多くのミュージシャン/アーティストからのラブ・コールがあったからだ[80年代デヴィッド・ボウイDavid Bowie)が、最もプロデュースしたいアーティストのひとりとして挙げてました、丁度、イギー・ポップ Iggy Pop)を劇的にシーンに復帰させてプロデュース業に意気軒高だった頃の事です]。
勿論、厄介物を追い払った筈のバンド、ピンク・フロイドPink Floyd)=ロジャー・ウォーターズRodger Waters)が発表した『炎〜あなたがここにいてほしい〜(原題:Wish You Were Here)』もその中で絶対に忘れる事の出来ない巨大なラヴレターのひとつ。前作『狂気(原題:Dark side of the Moon)』でのあまりに莫大な成功で方向性を見失っていたバンドが、クリエイテヴィティの原点である彼に"救い"を求めたとされる作品。クレイジー・ダイアモンドとは彼の渾名の謂いであるし、そもそも、「wish you were here〜あなたがここにいてほしい」とは、あまりにあからさまな告白ではないだろうか?(それぞれの楽曲名をクリックするとオリジナルの歌詞が掲載されているページにリンクされてます。)
shine on you crazy diamond
wish you were here

そして、あたかもそれに呼応するかの様に『炎〜あなたがここにいてほしい〜(原題:Wish You Were Here)』制作中に、救い主である"彼"がふらりと現れたという逸話も残されている。

そして、パンク/ニュー・ウェイヴを経た若い世代からは、そのポップで斬新な曲調の影響下である事を如実に表している。なかでも1987年に発表された『Beyond The Wildwood A Tribute to Syd Barrett』では、当時の英シーンの最前線にいた若手バンドがシド・バレットSyd Barrett)の楽曲をカヴァーする。所謂、トリビュート・アルバム。そして大事な事は、この作品がイギリスを遠く離れたアジアの小国でも一頃ブームになった、トリビュート・アルバム / トリビュート企画の嚆矢であるという点。ここでも彼はクリエイティビティとビジネス両面での成功を誘発する、触媒の役割を果たしたのでした。

個人的には、ピンク・フロイドPink Floyd)時代のシングル・ヒット曲「エミリー・プレイ(See Emily Play)」のキラキラと輝くポップ性も捨てがたいけれども、1970年発表のソロ第2作(そして最終作の)『その名はバレット(原題:Barrett)』に収録された「ドミノ(Domino)」がやっぱり一番好き。
これまでポップ・ミュージックの世界で謳われた愛の形は、刹那的で瞬間的で直情的なものが多かったけれども、この曲では永遠にいつ果てるとも解らないドミノ・ゲームの様な愛。それがフワフワと漂う様な独特の浮遊感に満ちたサウンドにのってうたわれている。
まるで、気狂いぢみた音楽業界から退いた、その後の彼の精神世界をうたったみたいだから。

故人のご冥福をお祈り致します。


barrettMadcap.jpgsydBarrettBarrett.jpg200px-Syd_barrett-opel.jpg
thepiperatthegatesofdawn.jpgDarkSideoftheMoon.jpgwishyouwerehere2.jpg
ちなみに、「クレイジー・ダイアモンド(shine on you crazy diamond)」と「あなたがここにいてほしい(wish you were here)」という二曲は深夜独りでぐでんぐでんに酔っぱらって、亡き友を偲びたい気分に丁度良い曲です、例え、そんな大事な友が過去から現在に渡って存在していなくとも、もしいたとしても存命であろうがなかろうが、ね。

posted =oyo= : 02:29 | comment (0) | trackBack (0) | ニュースをみる

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