2006年08月25日
ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン(HELEN MERRILL)
ヘレン・メリル(HELEN MERRILL)御本人はこのジャケット写真大ッ嫌いだそうだけれども、そりゃそうだよね。当時25才の女性的には、この眉間に皺が寄った顔のアップはちょっと耐えられないかも? それに彼女のヴォーカル・スタイルはホーン・ライクという表現が使われる程。クールで知的(悪く言えば情感不足)な唱法で、ひと呼んで「ニューヨークの溜息」。ちょっと意趣ちがいかもしれません。
勿論、ジャズ・ヴォーカルのジャケットという文脈では、美しい構図である事には間違いがありません。手前に配したヴォーカル・マイクに副ってスクエアにレイアウトされたシンガーの名前と収録楽曲のコンポジションは素直に端正であると言いたい。
ジャズ・アルバムとしても、ヴォーカル・アルバムとしても名盤中の名盤と支持されている作品だから、御存じの方にとっては耳タコかもしれないから、そういうヒトは黙っているか、ここで読むのを辞めて下さい。
この作品の聴き方は、三通りあります。言い方を変えれば、この作品には三人の主人公がいます。
唄と伴奏と編曲。言い方を変えれば、シンガーと演奏者とアレンジャー。つまりは、ヘレン・メリル(HELEN MERRILL)とクリフォード・ブラウン(Clifford Brown)とクインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)。ちなみにこのカップリングを思いついたのが、シンガーであるところのヘレン・メリル(HELEN MERRILL)。本作を発表する事になるエマーシー(EmArcy Records)とのレコーディング契約の条件として、彼女がプロデューサー、ボブ・シャッドに呈示したのが、編曲クインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)、ソロ・プレイヤー、クリフォード・ブラウン(Clifford Brown)だったのです。
その結果かどうかはわからないけれども、クリフォード・ブラウン(Clifford Brown)には本作を含めて三作品、所謂”ウィズ・クリフォード・ブラウン(with Clifford Brown)”と呼ばれる唄伴ものの名盤も誕生する。三作品しかないのは、彼が若くして交通事故死したからで、彼が長命を誇っていたのならば、その後のジャズも随分と異なったものになったでしょう、というのは余談ではありますが、彼の作品は全て名盤とも呼べる作品です。
で、一方のクインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)も、本作品以前から名アレンジャーの評価を得てはいたものの本作品発表の一年前までは、このクリフォード・ブラウン(Clifford Brown)と共にトランペッターとしてヨーロッパ楽旅していたという時代。映画『夜の大捜査線』の音楽や『スマックウォーター・ジャック』でのブラック・コンテンポラリー界での圧倒的な評価とか、あへて言うまでもないマイケル・ジャクソン(Michael Jackson)らの作品での名プロデューサーぶりは、まだまだ先の話であります。だって、まだ1950年代なんだもんね。
で、ホントの主役、ヘレン・メリル(HELEN MERRILL)はギル・エヴァンス(Gil Evans)とのコラボレーションなど、音楽的な冒険を果敢に行って行く訳です。日本にも一時期、活動の拠点にしてましたしね。
ところで、この作品、「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム(YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO)」の名演が収められているので、そればかりがフィーチャーされますが、個人的にはその次の曲「ホワッツ・ニュー(WHAT'S NEW)」の方が素晴らしいのではないかと?
ものづくし(click in the world!) 37.:
ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン (HELEN MERRILL)
HELEN MERRILL
ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン
1.DON'T EXPLAIN(Billy Holiday - Arthur Herzog)
ドント・エクスプレイン
2.YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO(Cole Porter)
ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム
3.WHAT'S NEW(Johnny Burke - Bob Haggart)
ホワッツ・ニュー
4.FALLING IN LOVE WITH LOVE(Lorenz Hart - Richard Rodgers)
フォーリング・ラヴ・ウィズ・ラヴ
5.YESTERDAYS(Otto Harbach - Jerome Kern)
イエスタデイズ
6.BORN TO BE BLUE(Hoffman - Silver)
ボーン・トゥー・ビー・ブルー
7.'S WONDERFUL(George Gershwin - Ira Gershwin)
スワンダフル
HELEN MERRILL WITH CLIFFORD BROWN
ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン
ヘレン・メリル HELEN MERRILL(vo)
クリフォード・ブラウン Clifford Brown(tp)
ダニー・バンク Donny Bank(fl)
ジミー・ジョーンズ Jimmy Jones(p)
バリー・ガルブレイス Barry Galbraith(g)
オシー・ジョンソン Osie Johnson(ds)
ボブ・ドナルドソン Bob Donaldson(ds)
ミルトン・ヒントン Milton Hinton(b)
オスカー・ペティフォード Oscar Pettiford(b & cello)
録音:1954年12月22・25日、ニューヨーク
Recorded : December 22,25,1954,New York
(P)1954
僕の持っている国内CD盤の解説は油井正一氏が書いてます。
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» "You'd Be So Nice To Come Home To" by Jo Stafford(『ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ』 by ジョー・スタッフォード) from with a kiss,passing the key
"You'd Be So Nice To Come Home To"performed by Jo Stafford from the... [詳しくはこちら]
コメント
>にょろこさん
はじめまして。るいがいつもお世話になってます。
適当に選んだ?作品のジャケットを勝手に描き写して、クレジットされているデータを調べあげて関連サイトにリンク貼って、最期に個人的な感想を書いてみる、という企画です。
>ジャケットのイラスト化が、なんだかピカソのキュービズムちっく
描き終えてから観てみると、シンガー手前のマイクを描いてみたかったみたいですね。それ以外は、かなりぞんざいな仕上がりで。スイマセン。
個人的には、肩ひじ張らないで唄を聴きたい時に引っ張り出します。
投稿者: たいとしはる feat.=OyO= | 2006年08月29日 01:40
こちらのエントリはるいさんがお書きになってるんでしょうか?
たいさんだったらはじめまして、です
すごくなつかしいーー このアルバム、名曲ぞろいですよね
そしてジャケットのイラスト化が、なんだかピカソのキュービズムちっくで
とても楽しいですね!
私もこのCDもっているけど、すっかり存在を忘れていました、
いつも聴くCD棚に、久しぶりに出してみようかな。
投稿者: にょろこ | 2006年08月28日 13:32