2006年11月23日
追悼ロバート・アルトマン
映画『マッシュ(M★A★S★H)』や『ウエディング(A Wedding)』や『ショート・カッツ(Short Cuts)』を手掛け、今年アカデミー(Academy Awards)名誉賞を受けた米国の映画監督、ロバート・アルトマン(Robert Altman)が20日、がんによる合併症のためロサンゼルスの病院で死去した。81歳。詳細はこちらとhere there is.
と、とりあへず追悼記事の最低限のフォーマットを遵守したら、あとは自由でしょう?
ロバート・アルトマン(Robert Altman)を好きな理由は、何の事はない、手のひらをひっくり返す様に、上辺や体面や名誉や虚飾やそういった表皮を必死で取り付くろうとする、ヒトビトの本音の部分や真実の姿を、いとも簡単に暴いて観せてくれるからに他ならない。そのヒトビトは、愚かだったり醜悪だったり悲惨だったりする訳だけれども、それをそのままズバリでこれ見よがしに露骨に描写するのではなくて、ユーモアというオブラートで包んであったりする。ヒトはそれをブラックな笑いと評します。
以前、ここで紹介したオムニバス映画『Aria』にやっぱりロバート・アルトマン(Robert Altman)も参加していて、彼のアリア / オペラに対する切り口はこうだ。
かつての貴族社会華やかりし頃、上流階級の紳士淑女は、救貧を口実に貧民を劇場に招いて観劇させた(その真意は推して知るべしで、贖罪を口実とした思い上がりと嘲笑と憐憫がないまぜになったものがなせる行為らしいが)との史実に則って、オペラシアターに溢れんばかりに集う、下層階級のヒトビトの行動を丹念に追うというもの。勿論、ステージでは生真面目にオペラが上演されている筈なのだけれども、それは一切映像化されず、思い思いに着飾っている(つもりの)彼らの一挙手一投足だけをスクリーンに映し出す。
画面に映し出されるのは招かれざる客であり、主客が転倒した世界であり、つまりは、いつものロバート・アルトマン(Robert Altman)が描く作品世界の主題だったりします。
しかもロバート・アルトマン(Robert Altman)作品の前の作品が生真面目にアリアの主題を正確無比に映像化した様なブルース・ベレスフォード(Bruce Beresford)の作品(NHKの「名曲アルバム」を想起するが宜しい)であるだけに、そのギャップと毒の強さでロバート・アルトマン(Robert Altman)節が大炸裂した形になっています。観方によっては、その生真面目なブルース・ベレスフォード(Bruce Beresford)の作品を観に集いしヒトビトがグロテスクに着飾った彼ら、愚かなる困窮層の様にもみえる。だから、真面目な映画ファン / オペラ・ファンと、一部のブルース・ベレスフォード(Bruce Beresford)ファン(と、もしかしたら御本人)からは顰蹙ものだったようだけれども。ちなみに取り上げた作品はジャン=フィリップ・ラモー(Jean-Philippe Rameau)の『アドリス(Abaris ou Les Boreades)』です。
そして、肝心なのはきちんとしたエンターティメントの法則にきっちりと則っていると言う事。例えば、先に記した「上流階級の紳士淑女は、救貧を口実に〜」という様な蘊蓄を知らなくても、あぁこの映像は貴族階級の愚かしさや醜さを表現しているのだなと"誤読"可能で、しかもそれは全く持って正しい解釈のひとつだったりする。僕達も映画公開時は、カルト・パフォーマンスグループのヴァージン・プリューンズ(Virgin Prunes)が一杯出ている映像作品って冗句を言いながら楽しんでました。
要は、ロバート・アルトマン(Robert Altman)作品には幾重にも重ねられた様々な意味が込められていて、それをひも解く為に僕達は何度も観るし、そして、その度に新しい解釈が可能だったという事に尽きます。
だからこそ、彼の作品の殆どが群集劇や集団劇という形を取り、主役不在のドラマ、もしくは誰でもが主役の物語となります。それは、彼の最初期の作品であるTV映画『コンバット!(COMBAT!)』から不変です。
...と、本来ならばここから彼の代表作をもって追悼の記事とすべきなのだけれども、こんな小品。しかも、未だにDVD化されていない作品評でお茶を濁してしまいます(映画の雰囲気を多少なりとも楽しみたい方はこちらをアクセス願います)。
大好きな『マッシュ(M★A★S★H)』や『ウエディング(A Wedding)』についてはいづれまた。
これでも『マッシュ(M★A★S★H)』はリアルタイムで劇場で観ていたりします。もっとも当時トシちゃん8才、主演女優のサリー・ケラーマン(Sally Kellerman)演じるホット・リップス(Hot Lips)の爆笑もんの入浴シーンしか、永い間記憶の片隅になかったんだけれどもね。
posted =oyo= : 01:57 | comment (4) | trackBack (0) | ニュースをみる /映画もみる
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コメント
> Smithd842
thanks your comment.
投稿者: =OyO= | 2014年10月21日 19:44
I conceive you have remarked some very interesting points , regards for the post.
投稿者: Smithd842 | 2014年10月21日 16:08
> K・Tさん
コメントありがとうございます。
>一時は、ハリウッドに干されたとき
その干されていた時代に制作されたのが、今回紹介した作品でした。
>ジェニファー・ジェイソン・リーをキャスティングした時
そう言えば、キャスティングの妙技も光る監督でしたね。
>御冥福をお祈りします。
そう言えば、このヒトコト抜けていました(ちゅど〜ん)。
投稿者: たいとしはる feat.=OyO= | 2006年11月24日 05:00
絶句・・・・
な、なんと、アルトマンが!
一時は、ハリウッドに干されたときもありましたね。
私の好きな作品は、ザ・プレイヤーです。
カンザスシティも、一筋縄ではいかなかった・・・
ジェニファー・ジェイソン・リーをキャスティングした時は歓喜しましたよ。
=OyO=さんの熱狂的なファンっぷりには足元にも及びませんが、
私もアルトマンの作品にはお世話になった身。
拙いながらも書き込ませて頂きました。
御冥福をお祈りします。
投稿者: K・T | 2006年11月23日 19:07