2007年02月07日
林檎な話
"なぜ流行歌には林檎が好まれるのか。そんなこと、私に分るはずがない"と結んでおきながら、戦前のヒット曲の「林檎の木の下で」も並木路子「リンゴの唄」も美空ひばり「リンゴ追分」も書き連ねているのが、澁澤龍彦の真骨頂。かの荒俣宏から大魔王の諱を贈られるだけの事はある。
図版はその文章で澁澤龍彦が紹介している『ジョン・リンドレ−英国果実図説(John Lindley
"Pomologia Britannica")』より。
だから、ここでは大魔王の婢の様なふりをして、かの大魔王も知りもしなかった(そして知る気も起きなかった)林檎の事を書き連ねるとしよう。
美空ひばりの「リンゴ追分」ではあるが、この曲を音楽好きはひょんなところで聴く事になる。レゲエ(reggae)の源流のひとつであるスカ(ska)という音楽ジャンルでは、実は有名な楽曲。半ばスタンダード化しているのだ。しかも、西部劇のヒーロー、リンゴ・キッド(Ringo Kidd aka Johnny Ringo)のテーマ・ソングの様な位置付けである。御丁寧にもトロージャンズ(The Trojans)のヴァ−ジョンでは拳銃の発砲音も鳴り響いている。
尤もこれには理由があって、そもそもがかのジャズの有名なコンボ、MJQ(モダン・ジャズ・カルテット : Modern Jazz Quartet)が来日公演を行った際に、日本の有名な楽曲のひとつとして「リンゴ追分」を取り上げてそれを演奏したのがその発端(その昔、FM放送で聴いた記憶はあるのですが音源化はされていないのでしょうか?)。スカ(ska)というジャンルはジャマイカ(Jamaica)でジャズが演奏される様なダンスホールを起点として始っただろうから、当地のジャズ・ミュージシャン(彼らが中心となって結成されたのがスカタライツ : Skatalites)が取り上げて次第に、この楽曲が独り歩きしていったに違いない。その独り歩きのよちよち歩きの結果が、りんご→ringo→Johnny Ringoという事なのであろう。
と、言う様な「リンゴ追分」トリビアを自慢げに書きたい訳ではさらさらなくて、僕たちが抱くであろうシンボリックな林檎のイメージに関して、つまりは先頃のアップル(apple)とアップル(apple)の和解の事を書きたかったのだが紙幅がここで尽きた。
さて冒頭の大魔王 澁澤龍彦の"なぜ流行歌には林檎が好まれるのか。そんなこと、私に分るはずがない"であるが、彼の最も美しい評論集と巷間謂われている『フローラ逍遥』の「林檎」の章で読む事が出来る。
ものづくし(click in the world!) 46.:林檎な話
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