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2007年03月31日

「だまって俺について来い」考:追悼植木等のようなもの

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だまって俺について来い』と言えば、作詞:青島幸男/作曲:萩原哲晶/唄:植木等のあの歌となるのが相場なのだろうけれども、ここはちょっと捻ってとり・みきの短編マンガの話を書くことにする。

そのエピソードそのものは、いたって単純な構造で、とり・みきマンガの常連キャラクター、たきたかんせい演じるナザレのイエスJesus of Nazareth)の生涯を、無音/無声で綴ると言うもの。若き教祖と共に、ベツレヘムBethlehem)からエルサレムJerusalem)へと赴く信者達が行進する大ゴマに、その『だまって俺について来い』が全編引用されているのだ。
ギャグマンガのオチとしては、最後に発せられる主人公のヒトコトが、山葵の様で味わい深くて、この作品でリスペクトされている青島幸男ハナ肇とクレイジーキャッツがクリエイトした"笑い"の、とり・みき的解釈となっている。

で、その辺の観れば解る話を、野暮ったくも阿呆らしく、語ってみようと言うのが本稿の意図であります。
だから、この短編ギャグマンガでの、トリビュートする側とトリビュートされる側、その双方をよぉく御存知の方は、もう、ここから先は読まなくても良いですよ、念の為。

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この歌の主人公≒植木等が呼び集めているのは「ぜにのないやつ」「彼女のないやつ」「仕事のないやつ」で、その集まった結果、彼が彼ら=「ないやつ」達に何をもたらしてくれるかと言うと、実は何ももたらしてくれない。何故なら「俺もない」からだ。
しかし、彼は言う「心配するな(中略)そのうちなんとかなるだろう」と。
主人公は彼らに対して担保出来るモノは一切、所有していないのにも関わらず、自信満々に「俺んところへこい」という(歌詞はこちらを御覧下さい)。

無責任

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植木等と、彼が所属するハナ肇とクレイジーキャッツというグループ、そして彼らのブレイン的な存在だった青島幸男を象徴することば、だ。正にその"無責任"そのままを歌に転位させたものと言ってよい。
ここから、この作品を産み出した時代のキブンとか、その結果として現在にもたらさられたモノを語ってよいのだけれども、そおゆう事は、植木等の訃報が飛び込んだその夜、新橋あたりのガード下の呑み屋でさんざん語り尽された筈だから、もううんざりでしょう。宿酔いの翌朝も、ずきずきする頭痛とむかつく胃を引き摺りながら、定刻通り出社した筈だから。
そうじゃなくて、この歌を純粋にラブ・ソングとして読み替えてみようと、思うのだ。

なにも与えない、なにも欲しない。

つまりは「無償の愛」とか「無辜の愛」とも呼ばれるもの。
カネや名誉や地位や富は、一切保証しないし、要求もしない。ただ、信ずることができるのならば、一緒に行こう、と。だから、彼が恋人?に啓示するものは、「青い空 白い雲」だったり、「地の果て 水平線」だったり、「燃えている あかね雲」の様な、とってもリアルな希望のシンボルだけだ。
それを「わかったら」「だまって俺について来い」
そういう風に誤読(あくまでも)してしまったら、そこにあるのは無責任なオトコではなくて、己に絶対の確信と自負を持つ、強い人間の姿しかみつけられない。

ただ、問題なのは、約2,000年の昔、イスラエルIsrael)の地で語られた言葉が、それと同趣旨なのかどうなのか?と、言うことだけなのだけれども。だからこそ、とり・みきの作品で、最後の最期(それとも最期の最後?)に発せられるナザレの青年Jesus of Nazareth)の言葉が、ぴりりと辛い(と、言うことは、山葵ぢゃなくて山椒だったのか)。


ps.:幼い頃に『シャボン玉ホリデー』等で観た、ハナ肇とクレイジーキャッツのギャグは、今思うととても都会的で洗練されていたオトナな笑いだった。彼らの後を追う様にデヴューして、たちまち彼らを追い抜いてしまったザ・ドリフターズの笑いが、コドモ達をターゲットにしていたのとは、まったく逆の指向性だったのと違って(勿論、どちらを是どちらを非とするわけではない)。
そのオトナな笑いの入口で、したり顔でボクを待ち受けていたのが、他ならない植木等だったのだ。


ps. for ps.:植木等の『ハイお呼びです!!』とフランク・ザッパFrank Zappa)の『Lumpy Gravy』。
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posted =oyo= : 21:06 | comment (0) | trackBack (0) | ニュースをみる

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