2021年03月11日
春雨ニ詠メル
濡れてひとり 怨みつら身の ことのはは あのよのことを 忘れたのでせふ
<読み>
ぬれてひとり うらみつらみの ことのはは あのよのことを わすれたのでしょう
<意味>
[春雨に] ひとり濡れながら、怨み辛みの言葉は「あの夜のことを [もう] 忘れたのでしょう」。
<解説>
詞書にある「春雨」と謂う語句と初句にある「濡れて」で憶い出すべきは、武市瑞山 (Takechi Hanpeita) をモデルとした、新国劇 (Shin-kokugeki Theater) の演目『月形半平太 (Tsukigata Hanpeita)』 [行友李風 (Rifu Yukitomo) 1919年 京都明治座 (Kyoto Meiji-za THeater)] であろう。その中に、雨が降り出したのを知り、芸妓 (Geiko) の雛菊 (HInagiku) が同伴する月形半平太 (Tsukigata Hanpeita) に語りかけるシーンがある。その際の月形半平太 (Tsukigata Hanpeita) の回答が「春雨じゃ、濡れてまいろう (It's Spring Rain. We'll Go And Get Wet.)」なのである。
雛菊には共に濡れて歩む月形半平太 (Tsukigata Hanpeita) と謂う存在があるが、いまの自分にはない、そんな感慨がそこに込められてある。
第4句にある「よ」は、"夜"の事であろうが、これを"世"と解すると、急に怖い歌となる。前者の解釈では過去のひと時を憶い出して恋人の心変わりを詰る歌ではあるが、後者になると、そのふたりの関係が来世を誓ったモノとも読めるし、前世でなんらかの交わりがこのふたりにあった、とも解せられるのだ。
posted =oyo= : 17:23 | comment (0) | trackBack (0) | るいの歌集(仮)
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.rtm.gr.jp/mt/mt-tb.cgi/3132