現在、不肖の父“ヤマタケ”が担当した初期「ルパン三世」テレビ用サウンドトラックはこちらのVap社から発売している「ルパン三世 ’71ME TRACKS」の中で、SE入りの音源としてだけでしか聞く事が出来ません。30年前の話です。この様に後々迄出版等が続くとはスタッフ一同、ミュージシャン一同誰一人考えもしなかった時代の作品です。
僕を時間軸にします。小学校六年の頃です。
低学年の頃からずっとオヤジにくっついてゴーストライターまでやらされていた僕は当然録音現場にもいる事が多かったのですが、このルパンに限っては「どうやったらロックになる?」というオヤジの相談だけが記憶にあります。伊集加代さんとミュージシャン達はいっつもどの番組の録音現場でも顔を合わせていますが、チャーリーコーセイ氏、よしろう広石氏の記憶がないので勉強に忙しかった事にしてさて9年後。
21才の時にコロムビア社よりその「MEトラック」からもう一度譜面を起こしてだいたい同じメンバーでLP盤を作りたいとのお話があります。オヤジのお調子全盛期としては末期にあたりますので息子達の比重も増し気味です。
フュージョンの世界に少し足を突っ込んでいた僕は若いミュージシャン達の参加と共に“レコード化”という事を意識してしまいます。若かったのです。
ヤマタケジャズバンドの面々も召し気味だった事とのバランスもあって。(この時チャーリーさんとよしろう広石さんとも御一緒します。)
今考えるとヤマタケいい加減セーノジャズセッションとは環境も又時代もマルチチャンネル化と共に全く違った扉の向こうでのお行儀の良いレコーディングだった様に思えます。
オマケニCDとして後々迄残るとははたまた誰一人(?)考えもしていなかったのです。20年前の話です。
そして20年がたちました。オヤジは向こうの部屋で老化と戦い」つつも“ヤマタケ”の愛称で復刻盤やらリミックス盤やらDVDやらでもうひとっ花を咲かせています。
現在迄父の作品の復刻・リメイクに携わって下さったアーティストの方々、真剣にトリビュートして下さった皆様にもう一度心から御礼申し上げます。
さて新世紀、“オリジナルアレンジに忠実に新しく”リメイクしたいとのお話を当社から頂きました。っという事は。オヤジの殆んど全てを見て来た僕本人が血のままに取り組むべき仕事だと思いました。オヤジがルパンを最初に作った時と今の僕の年令も同じなのです。オヤジのふんどしシリーズの臆面も無くやってみようと。
まずオヤジがやっていた様に強力で仲良しミュージシャン達に集まってもらう事を考えました。 その中心に作曲家だけど超ジャズピアニスト、谷川賢作氏に無理になってもらっちゃって。
そしてそして集まって頂きました尊敬する面々。特に初めて御一緒出来た坂井紅介(W.B)さん、元マルコシアス佐藤研二(E.B)さん。加えて大友良英氏「山下毅雄を斬る」作品で御一緒した面々。本当に素晴らしい方々に参加して頂きシアワセでした。
それから当然ブラスセクション。これにはブラバン強力母校の後輩(実は賢作氏も)である波多野直彦率いる“THE WIND WAVE”の参加を波多野くんのブラスアレンジごとお願いしました。チェイス好きにはたまらない強力な味付けになりました。
そしてそしてこちらは二代目なのにまだ現役バリバリのオリジナルシンガーの皆様。
特に今回コロムビア盤以来の参加となるよしろう広石さん。コロムビア盤にクレジットされていたのに一度もリメイク界に登場していなかったよしろうさん(男性ヴォーカルは全部チャーリーさんだと思われていたらしい)の存在をあぶり出して頂いた映画秘宝編集部と加藤義彦さん、ありがとうございます。チャーリーさん伊集さんとよしろうさんの揃い踏みあっての当リメイクだったと実感しています。
っといった方々に集まって頂きさてどの様にオヤジをリスペクトした録音をするか?オヤジの様に口笛と叫びを録り乍ら指揮するか?それに近い形で僕が出来る事、それは仮唄による指揮だったのでした。
昔の様にドンカマ(メトロノーム)無しで全テイク録りたかったのですべてのテイク(NGテイクにも)に仮唄が必要だったのです(ヴォーカル陣はリズムトラック録音後に集まって来るからね)。
歌ったり口笛吹いたり叫んだり、結局オヤジと同じ事をヴォーカルブースの中でやっていた訳です。作家もミュージシャンと同じパッションで演奏に参加しているという図ですね。勿論ミュージシャンの技量あっての芸当ですが。
そしてそして僕も作曲屋です。オヤジの作品を再現するだけでは収まりません。 ルパンファンの皆様ゴメンナサイ。又勝手に書き下ろし作品を作らさせて頂いちゃいました。
いつもオヤジの助手席で聞いていたハワイアンとボザノバ。無国籍ルパンに一時帰国してもらっちゃいました。昨年訪れたパリとルパンと父に対するトリビュートです。
オシャレが大好きだったド派手なヤマタケ作品の一つ、僕。
僕からのオシャレ返しです。
プロデュース・山下 透
解説・たいとしはる
VAP(VPCC-81406)
2002.1.23
¥3,000(tax in)